●おお、『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』がフランス(パリ日本文化会館)で上映される、と。
https://www.mcjp.fr/fr/agenda/nouvelles-trajectoires_1/village-on-the-village
●今日はDVDで『宗方姉妹』を観ていた(松竹の映画ではないのでhuluのラインナップにはない)。何度観ても、気圧されるような苛烈な映画だと思う。『晩春』(1949年)と『麦秋』(1951年)の間の1950年という、まさに小津の絶頂期につくられた異色作(小津がはじめて松竹以外で撮った映画)。小津の映画は勿論、それぞれどれも何度観ても面白さが尽きないのだけど、「凄味」という意味で、ぼくはこの時期の『晩春』(1949年)、『宗方姉妹』(1950年)、『麦秋』(1951年)がベスト3であるように思う(好みで言えば『麦秋』が一番好きだけど)。
山村聰田中絹代を何度も激しく殴る場面があったり、豪雨の場面があったり、人が死ぬ瞬間を直接示していたりと、普段の小津ならあまりやらないことをずいぶんやっている。冒頭、末期ガンで余命が短いと言われた笠智衆が、映画の最後まで割と元気に変わらず生きていて、若い山村聰が急死するというような作劇も、小津にはあまりみられないように思う。冒頭の場面で、笠智衆の友人である医者が、学生への講義で友人のガンをネタとして笑いをとっている場面とか、そうとうエグい。
徹底してダメな奴である山村聰の半端なく荒んだ感じ、ほんとうに能面みたいな田中絹代の無表情、ほとんど成瀬の映画に出ている時と変わらない感じで---小津の映画じゃないみたいに---いきいきと動き回る高峰秀子、品が良すぎて間が抜けてさえみえる上原謙(『山の音』の中年男性のいやらしさ丸出しの感じと全然違う)、そして、中年女性の狡猾さとエロさを濃厚にまといながらも、同時にきっぱりとした矜持も表現している高杉早苗(チョイ役なんだけどこの人がすごく効いている)。バランスが良いのか悪いのか分からない、この人物たちの配置から生み出される複雑で苛烈な運動。ただただすげえと見入ってしまう。
●最近、映画にかんしては、小津と成瀬だけを観ていれば満ち足りてしまう感じがあってやばい。いや、DVDやネット配信ではちょこちょこといろいろ観てはいるのだけど、結果として深く印象に残るのが、小津と成瀬ばかりだったりする。これは老化というものなのか。いや、たんに何度目かのマイブームがきているだけだと思うけど。
(ただ、小津や成瀬を観ていると、何度も『夏の娘たち〜ひめごと』のことが頭をよぎるのだけど。)