●huluをいったん抜けて、NETFLIXに試しに入ってみた(NETFLIXオリジナルの『オルタード・カーボン』が観たかったので)。ただ、ざっとみただけだけどNETFLIXのラインナップはhulu以上に今時っぽくて、古典はもちろん、少しでも古い映画やマイナーな映画になると極端に貧しくなる。それと、NETFLIXは基本的にオリジナル作品押しなんだな、と(まあ、どちらも一長一短かなあ、と)。あと、NETFLIXはどちらかというと、こちらがチェックした作品の傾向をみて向こうから「おすすめ」してくる方針らしくて、検索がすごく使いにくい。
それで最初は軽く失望したのだけど、検索で深く掘っていくと「掘り出し物」がそれなりにポコッ、ポコッと出てはくるので(逆に言えば、深く掘っていかないとそういうものになかなか巡り会えない)、とりあえず、ひたすらいろいろ検索してみて、少しでも興味がひっかかったものを、かたっぱしからマイリストに登録するということをやりつづけた。検索が使いにくいので、一度逃すと、再びその作品を探し出すのがかなり大変そうだったので、深く考えずにとにかくリストに入れた。そんなことをとしているうちに三時間以上時間が経っていて、なんかすごく無駄に時間を過ごしてしまった気持ちになった。
(でも、モンテ・ヘルマンの『果てなき路』とか、ポン・ジュノNETFLIXオリジナル作品とか、イオセリアーニの『汽車はふたたび故郷へ』とか、クローネンバーグの『ザ・ブルード』とか、シャブロルの『引き裂かれた女』とかが発掘できた時は---本当に「発掘する」という感じなのだけど---おおっと思った。あと、大島渚の未見の作品『夏の妹』なんかもあった。)
二千円(二ヶ月分)のプリペイドカードを買って、無料期間が一ヶ月あるので、三ヶ月はNETFLIXが観られるわけだけど、けっこう膨大になったマイリストを観て、三ヶ月でこのうちどれだけ観ることになるのかなあ、と思うのだった。だいたい、そんなに映画やアニメを観ている時間ばかりもとれないと思うし……。
結局、割高になってしまっても、その時に観ようと思ったものを、その都度お金を支払って、アマゾンビデオとかDMMとかで観る方がいいのかもしれない、と思う。ただ、huluやNETFLIXは、見逃したアニメをまとめて観られるからなあ…、と(もしhuluに入っていなかったら、『クイズとき子さん』の存在を知ることさえできなかったかもれないのだし)。
●『オルタード・カーボン』、3話まで観た。雰囲気は『ブレードランナー』だけど、内容的にはダークな「攻殻」という感じ。クサナギに出会えなかったバトーが、大金持ちに拾われて非合法的に行動する、みたいな。バトーは元傭兵で戦場でトラウマを背負うのだけど、「オルタード…」の主人公タケシは、元は反体制的な思想をもつテロリストで、幼い頃からの育ちも含め、テロ活動を通していろいろなトラウマをもっている。
攻殻」では、脳にナノマシンを入れて、ブレイン・マシン・インターフェイスを実現することで疑体化しているので、「脳」だけは有機的なオリジナルが残っている(つまり脳=人格・魂=アイデンティティ)である。しかし、「オルタード…」では、「まど☆マギ」のソウルジェムみたいにも見えるチップに、人格や魂も含めたその人のすべてのデータが入っていて、それを延髄のあたりに埋め込むことでその身体を「自分のもの」にする(イーガンの「ぼくになることを」みたいな感じ)。だから脳でさえオリジナルである必要はなく(魂は完全にデータ化されているので)、他人ものだった有機的身体(死体)にも「わたし」として入り込める。有機体としての身体は、デザインされて、工場で生産もされている。そういう技術によって、「不死」が実現している世界。
テロリストであるタケシは、体を奪われ(というか、体は殺されて)、チップだけになったままで250年間も刑務所に収監されていたのだが、ある日とつぜん、大金持ちに「買われる」かたちで、まったく別の体をあてがわれて娑婆に復帰する、と。
(「攻殻」では、魂=脳=有機体=オリジナルで、交換可能な「体」が機械なわけだけど、「オルタード…」では、魂=データ=オリジナルで、それは無機的な媒体に書き込まれていて、交換可能な「体」の方が有機体となっている。「攻殻」では、体はいくらでも交換可能でも、魂=オリジナルは脳なので歳をとる。よって、老化や死は逃れられない。しかし、「オルタード…」では、魂=オリジナルがデジタルデータなので、「脳」が歳をとっても、再び若い状態の脳にデータをロードすればいいのだから、経験は蓄積されるが、有機体(身体)としての「脳」を何度でも若返らせることができる。)
大金持ちの依頼は「わたしを殺した犯人を探せ」というもの。その大金持ちは、体だけでなく人格チップまで含めて破壊され、つまり完全に殺された(リアルダイ)。ただ、その金持ちは自分専用の通信衛星をもっていて、一時間に一度、定期的に自分の人格データをそこにバックアップとして保存しておく。だから金持ちは、殺された時間の前後一時間程度の記憶をなくしただけで復活できた。つまり、お金があれば、基本的に不死であるというだけでなく、どうやったって(事故でも殺人でも)死なないようにできている世界だ。なので、同じお金持ちたちが永遠に世界を支配し続ける。
(ちなみに、そのお金持ちは家族に対して相続をいっさい認めていないので、その人が死ぬと残された家族は一文無しになる。彼はそうやって身内によって殺されないように身を守っている。だから、金持ちの子供は、一文無しになりたくなければ、何歳になっても、永遠に「父の子供」でありつづけ、永遠に「父の子供」として生き続ける。子供以外であることができない。)
お金持ちは、殺されたその時の記憶は失われているので、誰にやられたのかはわからない。だからその犯人を探せ、と。元テロリストのタケシに依頼する、と。そんな話。