●『シュタインズゲート・ゼロ』、七話まできて、ようやく物語が動きはじめた。最近のアニメで、物語がここまでゆったりと立ち上がる感じのものは珍しい。この感じが『シュタゲ』的だ。
前作『シュタインズゲート』では、物語の争点は「タイムマシン」であり、敵は「CERN」で、避けるべき未来のディストピアは、「タイムマシンの独占による、世界のCERNによる独裁支配」だった。そして、物語を動かす主な動機は「椎名まゆりの死を回避する」こと(椎名まゆりは何度も死に、その度に時間は巻き戻される)で、作品のクライマックスとなる最大の難問は、「牧瀬紅莉栖の死が回避される世界では椎名まゆりが必ず死に、椎名まゆりの死が回避される世界では牧瀬紅莉栖が必ず死ぬ」という二律背反をどう解決するのかであった。主人公、岡部倫太郎にとって、椎名まゆりの死の回避のための、唯一にして最大の協力者が牧瀬紅莉栖であり、その牧瀬紅莉栖の死と引き換えにしなければ椎名まゆりを救えないという難問が、「観測した事実を変えずに、結果を変える」ことによって解決し、物語はきれいに閉じられる。
対して、今までのところ『シュタインズゲート・ゼロ』では、物語の争点はどうやら「AI」であるらしく、敵はCERNではなく「フリーメーソン的な何か」であるようで、避けられるべき未来のディストピアは「大量死をもたらす第三次世界大戦」であると言える。ただ、未来から来ている阿万音鈴羽は、第三次世界大戦とAIとの因果関係については何も語ってはいないし、第三次世界大戦をもたらす元凶は依然として「タイムマシン」であるようだ。つまり、AIは、未来を変える大きな要因とは言えないことになる。未来を変える大きな要因とは言えないAIが、本当にこの物語の最大の争点になり得るのかは、現時点では不明だ。
この物語でAIは、AIであるというより牧瀬紅莉栖の幽霊でしかないのかもしれない。『シュタインズゲート』の物語世界でタイムマシンの基礎理論をつくったのは牧瀬紅莉栖であるが、『シュタインズゲート・ゼロ』の世界では、牧瀬紅莉栖が若くして死んでいるので、タイムマシンは橋田至によって未来につくられるということになっている(未来から来た阿万音鈴羽による発言)。しかしこの世界でも、牧瀬紅莉栖の幽霊(AI)が存在することが、タイムマシンの開発に何かしらの影響を与えるということであれば、AIが争点であるというよりも、牧瀬紅莉栖の存在が(つまり、依然としてタイムマシンが)争点だということになるのかもしれない。
今までもそれを匂わせる描写はあったと思うが、七話ではじめてはっきりとした「世界線の移動」が生じている。『シュタインズゲート』において、世界線の移動は、タイムマシンによって過去を改変することによって起こるものだった。しかし、『シュタインズゲート・ゼロ』では、すくなくとも主な登場人物たちはまだ誰もタイムマシンに触っていない(未来から阿万音鈴羽が来ているので、彼らの身近にタイムマシンが存在してはいるが)。だとすれば、タイムマシンを所有する「別の誰か(組織)」が存在し、その誰かが過去に対して干渉した、ということになるのだろうか。
物語は動きだしたが、この物語を動かす主な動機はまだ明確に示されてはいない。