●『レスト―夫人』の三島芳治によるウェブ連載、『児玉まりあ文学集成』。正直、いまのところはイマイチだけど、今後の展開に期待したい。
http://to-ti.in/product/mariakodama
●価値観を揺さぶる「近未来予測」に、あなたの人生設計は耐えられるか?:『〔データブック〕近未来予測2025』(ティム・ジョーンズ、キャロライン・デューイング=著、江口泰子=訳)著者インタヴュー(WIRED)
https://wired.jp/2018/06/08/future-agenda-interview/
《「国が高い税率で福祉を手厚くする北欧モデルは、明らかに成功しています。けれどスウェーデンですら1,000万人程度しかいない。国の人口が少ない上に、思いやりが大切だという文化に根ざすものです。個人主義が進んだアメリカなどの国では、採用できそうにない。そもそも格差をいとわない文化なのです」(ティム・ジョーンズ)》
《最低限の生活を送るのに必要な現金が定期的に支給されるという仕組み、いわゆるユニヴァーサル・ベーシックインカム(UBI)は、格差社会に対する解決策のひとつといえるだろう。しかし「個人主義の国」たるアメリカでは難しい選択だと前述した。一方、フェイスブックやアルファベットといった米国由来の大企業は、自ら市民に現金を支給することを検討しているという。》
《「自分達のビジネスが格差を生んだのであれば、自分達がベーシックインカムを支払うべきだという考え方です。ビル・ゲイツはロボットやAIに課税すべきとも語っています」(ティム・ジョーンズ)》
《「国が企業から法人税を徴収して国民に環流させるシステムでは、武器を買ったりといった無駄に費やされてしまい、効率が悪い。言い換えれば、アメリカの企業は政府を信頼していない。住民の手に直接、届けたいと思っているのです」(ティム・ジョーンズ)》
《ちなみに日本は「自国の政府を信頼するか」というアンケート調査で26位。残念ながら最下位だ。》
●だが、収税と再分配の権限をもっていることは、国家(官僚)の権力の源泉とも言えるので、それを一部肩代わりさせるような企業ベーシックインカムのようなものは(実質上、脱税なので)おそらく禁止されるだろう。国は、法律を作ることで特定の行為を禁止し、それを、権力(暴力)を背景にして強制的に守らせることができる。
(古くから地域を牛耳っているヤクザが、新興ヤクザに圧力をかけるようなものだろう。)
ただ、フェイスブックやグーグル(アルファベット)のような企業がそのような国家を嫌い、タックスヘイブンのような地域に拠点を移動し、租税を回避しつつ、その分を、非法定通貨(ポイントのようなもの)を使って消費者(個別のアカウント)に通貨を分配するということはあり得るかもしれない。巨大な企業の力により、ポイントでほとんどのものが買え、家賃や光熱費なども払えるのならば、それで生活することは可能だ。
(タックスヘイブンによる企業の租税回避は、一方では許し難い利己的な不正だが、もし仮に、国よりも企業の良心---と、持続可能性---を「信頼する」ことができるとすれば、それは必ずしも悪ではなくなるかもしれない。)
とはいえ、そのような非法定通貨による経済圏の拡大はそのまま、法定通貨による経済圏(国家の経済規模・税収)の縮小を意味するので---それも実質、脱税だ---国家がそれを黙って見逃すとは思えない。
●この本では、中央政府の影響力は次第に減少し、それにかわって、企業や地方自治体(都市同士のグローバルなネットワークなど)の勢力が拡大していくだろうと予想されている。まあ、それはそうだろうと思う。しかし、国家官僚には様々な権力があり、国には立法権と軍事力、警察力があり、最終手段として力(暴力)を背景にして押し切ることができるというアドバンテージがある。そういう意味で世界は決してフラットではないように思われる。この本の著者は、そこをどう考えるのだろうか。
《2017年6月、トランプ大統領は気候変動の取り組みにおいて、パリ協定の離脱を宣言。ところが同月、カリフォルニア州をはじめとする国内の自治体が独自に気候同盟を設立し、他国とも連携するという声明を発表した。カリフォルニア州知事はトランプ大統領を名指しに批判、対抗手段をとると啖呵を切ったのだ。》
《「フランスではパリが2030年までに内燃機関のクルマを追放し、電気自動車(EV)だけにする計画を発表していますが、国が掲げる目標より10年も早い。コロンビアという国はいろいろと評判が悪いけれど、一方でメデジンという都市は渋滞知らずの公共交通機関をもっていることで世界中の注目を浴びています。糖分による肥満や禁煙の問題なども、都市が政策を実現していくスピードが早い」(キャロライン・デューイング)》
《フラットでネットワーキングされた社会において、国家の枠組みが膠着状態となり、果たすべき機能を喪失していく。信頼を失う。一方で、都市や企業が存在感を増し、手を差し伸べようとする。》
●われわれは何を信じればいいのか、どうやればうまくいくのか。民主主義は本当に信じるに足りるものなのか。以下は、本文より引用。
アラブ首長国連邦のような良性の独裁国家であろうと、中国共産党であろうと、民主主義ではない国家がかなりうまくいっている。また国民の支持においても大きな変化がみられる。なぜなら、アメリカ人の二倍もの中国人が、自国の進む方向に極めて満足している一方、EUではこの三〇年に投票率が三分の二に減少したからだ。フランスや英国、ドイツの国政選挙への投票率はいまや、ロシアやアメリカ並みに低い。》