●ネットフリックスでニコラ・テスラのドキュメンタリー(「アメリカン・エクスペリエンス テスラ 電気の魔術師」)を観ていた。テスラは、まちがいなくデヴィッド・リンチのインスピレーションの重要な源泉の一つだと思った。
晩年のテスラが、投資家からの出資も得られず、孤独に暮らしていた頃、毎日、公園のハトにエサをやっていたという。そして、そのハトの群れのなかに特別な雌のハトが一羽いて、そのハトと相思相愛であると語っていたという。犬や猫ならともかく、ハトの個体と双方向に心を通わせるという感覚は、すごく特異的だと思った。「ハト」っていうのが、とても面白い。
たとえば、カラスの個体ならば頭良さそうだし、人間との呼応関係が成り立つ感じもある。あるいは、小鳥が、愛玩の対象としての女性の暗喩となるというのは、文学的な紋切り型の一つだろう。「鳩子」という女性の名前もあり得る。でもそれはあくまで「鳩」という語からくるイメージで、個体としてのハトの「あの感じ」(じっと見ていると気持ちが悪くなるような不思議なパルス的な動きだ)は、小型の鳥のなかでも最も感情を感じにくい種類のひとつであるように思う。こちら側からの感情移入すら難しい感じなのに、向こうからの感情的なレスポンスも感じられる(相思相愛)というのはすごい。特定の一羽というよりは、「群れ」という単位としてイメージした方が、まだ何かしらの交感があるという感覚をイメージしやすい。
ただ、たとえば熊谷守一もハトを描いていた。ハトの独特なあの感じには、通常の感情的交感とは別の交感のチャンルネを刺激する何かがあるのかもしれない。
(そういえばリンチはアヒル好きだ。)