後藤慶二という名前も、豊多摩刑務所の正門のこともなにも知らなかったが、下の記事の写真一枚から見て取れる限りでのプロポーションの美しさだけからでも、これがよいものだということが分かるレベルで、よい建築ではないかと思う。「建築家・後藤慶二の代表作「豊多摩刑務所」正門が取り壊しか。現在、中野区が意見を募集中」(美術手帖)
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/18614
さらに、YouTubeには現存していた頃の豊多摩刑務所の映像もアップされている(長島さんのツイッターで知った)。「THE DOCUMENTS IN THE TOYOTAMA PRISON (豊多摩監獄)」
https://www.youtube.com/watch?v=YhTxKX7l38k&feature=share
これはすごいのではないか。こんなによい近代建築の実物が、昭和58年(1983年)までは東京に実在していたのか。上の動画で藤森照信は何度も「マッス」という言葉を使っているけど、虚としての空間の表情を、実(物)としての塊や形によって表現することのできている作品(建築に限らず)というのは、そんなにはないと思う。
しかし、こういう建築が、寺院や教会や役所のようなものだけでなく、刑務所として形になるということに、社会と建築との関係があらわれている(たぶん、それがぼくに「建築」に対する距離を置かせる)。陳腐な妄想だが、映像を見ていて、埴谷雄高の『死霊』の着想は、ここで芽生えたのではないか、とか思った。
83年に、閉鎖、解体。83年か……。