2020-06-24

●『ラディカル・マーケット』に書かれているQuadratic Voting(二次の投票)が、近い将来実際に国政や地方の「選挙」で採用されるという未来を考えるのは難しいかもしれないけど、たとえば、マンションの管理組合とか自治会とかPTAとか、そういう(トップダウン的ではない、メンバーが多様で並列的な)組織における集団的な意思決定になら、すぐにでも使えるのではないか。多数決という、あまりに暴力的な制度よりはあきらかに良い制度のように思われるのだけど。これを使うだけで、政治的な(根回しや顔色伺いや忖度的な)めんどくささみたいなものも多少は解消されるのではないか。

(本文中では、世論調査をQVアプリを使って行った例が出てきていたけど、QVアプリはもっと幅広く実践的に使えるのではないか。)

(つまり、そういう小さな規模のレベルで、QVが本当に上手くいくのか、どこに問題があるのか、を、試してみることができるということだ。)

選挙制度を変えることができるのは、「今ある選挙制度で勝ち上がった国会議員」なので、これはなかなか難しい。だが、政党内の政策方針の決定や役職の人事をQVで行う、ということなら可能だろう。

COST(共同自己申告税)の考え方を、「国」という単位ではなく、もっと小さな組織でも応用できるとしたらどのような形でなのかを考えてみるのだが、こちらはけっこう難しい。

(『ラディカル・マーケット』は、とても急進的な市場至上主義とも言えるような立場で貫かれているのだが、たとえそのような立場には同意出来ないと考えるとしても、QVというやり方が多数決よりもずっと優れているという点は肯定できるのではないかと思う。)

●『ラディカル・マーケット』は、各章の先頭にある例え話的なフィクションの部分がとても面白いのが特徴的だ。学者が一般読者向けに書く啓蒙書に出てくる「例え話的フィクション」は、多くの場合とても残念な感じになってしまうのだが、この本ではそうではない。こういうところにも、著者の頭の良さの幅の広さが半端ではないことが出ている。