2020-11-18

●アーティスト系の人こそが陰謀論にはまりやすいという傾向はあるのかもしれない。感性が鋭いというのは、見逃しがちな小さな違和感やノイズを拾い、それを繊細な手つきで増幅させて検討するということだと言えるだろう。それは、平常時では、多くの人が気づかない、隠された(未だ発見されていない)問題や徴候を見いだすという意味で、概ねよい方向に作用するだろう。しかし、不安や混乱が社会を覆っているような時には、不安や危機感を過剰に増幅させてしまうことから、ありもしない問題を空から浮かび上がらせてしまうということにもなりがちだろう。

おそらく、常識にとらわれず、前提とされているものを疑い、感性を大事にし、自分の頭で考える、という人ほど、陰謀論にたいする脆弱性が高いのではないか。それに抵抗するには、世界の小さな揺らぎを見逃さない感性だけでなく、蓋然性という概念から導かれる、ある種の鈍感力が必要とされるのかもしれない。

(論理的に考えをくみ上げていった結果が、常識から遠くなればなるほど、ドキドキし高揚するという傾向は、自分にもある。ドギドキこそがリアリティであるという側面と、蓋然性こそがリアリティであるという側面があり、どちらかを捨てるとヤバいのかもしれない。)