2021-04-22

萩尾望都の本、つい読んでしまった。特に熱心なファンというわけでもないのに、興味本位で首を突っ込んで他人のデリケートな事情をのぞき見してしまった罪悪感が強く残る。

(とはいえ、この本から最も強く感じられたことは、語られている個々の出来事よりも、語り口から立ち上がる、出来事のすべてを貫く「それらを語っている人格」への尊敬の念だった。語られていることの信憑性は、エビデンスによってではなく、それを語っている人格への信頼によって支えられる。そのような意味で、ここに語られているのは主観によってしか捉えられない世界の真実だろう。)

(どちらか一方の主観としてしか語れない真実というものがおそらくあって、それは俯瞰して見た途端に消えてしまう。故に徹底してその主観を真に受けなければならない。もちろん、もう一方の主観からしか語れない別の真実もあるはず。双方は同一空間上に並べられないので、対立することすら出来ない。排他的で両立不能な異なる真実が並立するのが世界であり、故に基底としての「世界」は存在しない。相容れない二つの絶対があるということで、これは相対主義ではない。)