2021-07-30

●マンガを読むとすごく目が疲れるのでいつからか苦手意識が芽生え、最近ではほとんど読まなくなってしまったのだけど、文庫版ならなおさらだが、単行本サイズでさえも、字が小さ過ぎ、それだけでなく絵も小さ過ぎる、というのがその主な原因なのではないかと思って、でも、電子書籍で読めばサイズを変えられるから目の負担を少なく読めるのではないかと考えたことが、タブレットを買った動機の一つだった。

で、電子書籍ではじめてマンガを買ってみた。萩尾望都バルバラ異界』1~4巻。絵を拡大できるとマンガはこんなに読みやすいのか、と思った。読むペースも紙の本よりもつかみやすい。先がはやく知りたくて目がはしってしまいそうなところを、「絵を拡大できる」ということが頭にあるからそれが「拡大してみる」という実際の行為をしばしば惹起して、先走りがほどよく抑えられる感じ。これはテキストを読む時も同じなのだが、ただ目で追っているだけだと目が先走りしやすく、書かれ(描かれ)ているものとの接点を失いがちだけど、傍線を引いたり書き込みをする、あるいは、指を使ってスワイプしたり拡大させたりする、という行為を介することで見ているものと物質的・触覚的な接点を保ち、それを通じて内容への関心や探索の接点を維持しつづけることがし易くなるという、感じがある。

しかし、そういうことはそれとして、それ以上に『バルバラ異界』がとてもおもしろかった。なんとなくおもしろそうな感じがひっかかったことと、全四巻で完結するコンパクトな作品だから「電子書籍でマンガを読む」ことの「お試し」としてちょうど良いかと軽い気持ちで選んだのだが、こんなにおもしろい話があるのかと驚くくらい、物語の魅惑的な要素が詰まっていて、そしてそれがとても納得できるかたちで緊密に絡み合って構築されているのだった。すごく複雑な話だが、その複雑さのあり方に必然性があるように感じられる。たんに物語が複雑だというだけでなく、モチーフの複雑な絡み合いのあり様そのものに説得力を感じる。