2021-09-26

●近所に昔からある床屋がある。ぼくが小学生の頃にバリカンで刈り上げしてもらっていたところだ。前を通ると、二十代から三十代はじめくらいに見える若い男性が理容師をしているのが見える。いままでなんとなく、昔刈り上げられたあのおっちゃんの子供が店を継いだのだろうと思っていたが、考えてみるとそれは変だ。あのおっちゃんの息子なら年齢はぼくと同じくらいであるはずだ。えっ、なら孫なのか。店の前を歩きながら思わず「孫なのか! 」と口から言葉がでた。三代つづいているのか、おじいさんの店を孫が継いだのか、大学に入ってから二十五年以上地元を離れていたので、その間のことは分からないが、息子ということはないだろう。それをいままでなんとなく息子と思っていたぼくの時間感覚がおかしい。自分が歳をとっているのだということが感覚として分かっていないのだ。

考えてみれば、子供の頃からいままで同じ店がつづいているのは近所ではそこだけだ。中学生の時に店の前にエロ本の販売機があった雑貨屋は、とっくの昔から営業はしていないが建物だけは廃墟のように残っていた。でもその建物も最近取り壊された。それくらい時間が経っているのだ。