2021-12-03

●学生の課題レポートを読んで、すばらしいとまでは言わないが、面白いと思えるものではあった。多くの人が、少なくとも講義でぼくが「言ったこと」はちゃんと理解して聞いていてくれたのだということが分かった。

(講義で取り上げたなかで最も興味を惹かれた作家・作品について書くという課題で、中間課題ではビオイ=カサーレスが圧倒的に人気だったが、期末課題ではもうちょっといい感じでばらけた。とはいえ一番人気はかわらずビオイ=カサーレスだったが。講義の終盤で取り上げた日本の現代作家は、やはり親しみやすいのか---常識的にはあまり親しみやすくはないような作風の作家ばかりなのだが---選ぶ人が多かった。ただ、デュラスについてのレポートを書いた人は一人もいなかった。デュラスは、難し過ぎたのかもしれないし、ぼく自身も咀嚼し切れていなかったかもしれない。)

成績は、(1)イマイチ、(2)普通(レポートにまじめに取り組んだことはうかがえる)、(3)自分の頭で考え出した観点が一つ以上ある、(4)ユニークな観点が一つ以上ある、(5)それ以上、の、五段階くらいに分けられる、と思った。基準点は(3)ではなく(2)で、(2)の人が一番多く、そこに至らなかったか、そこからどれだけ加点されるか、という感じ。だがそもそも、能力を審査したり、成績で差をつけるような目的の科目でもないので、レポートさえ提出していれば、(1)でも、それなりに高い点数にはなる。最高点の(5)に相当する人は、55人の学生中で二人いるかなあ、と。

レポートに、「普通に生きていたら自分ひとりでは決して得られなかっただろう視点を得られた」というメッセージを附けてくれた学生がいて、それは素直にうれしかった。文学史や文学研究の講義ではないし、逆に、作家や批評家の育成を目指すような実践的な講義でもなく、文化・芸術的なものに予め強い関心をもっている人に向けた講義でもない。理系の学生に、小説を読む(あるいは、文化的なものに触れる)ということには十分な意義があり、受動的な読み方や、消費するような読み方とは違った読み方がある、ということを感じてもらうことが目的の講義で、学生が、今後どような人生を送ったとしても、その人生のなかで、文化的、文学的なものに触れる習慣をもちつづけるような、そのきっかけになるようなものであれれば、と願う。