2022/02/22

●『天国にちがいない』(エリア・スレイマン)をU-NEXTで観た。二度目。これは本当に最高だ。好き、嫌いという基準でなら、少なくともここ数年で観た映画のなかではダントツで一位だろう。しかし、何がどう良いのかを言語化するのは難しい。難しいし、あまり言語化したくないという気持ちもある。とにかく隅々まですべてがすばらしい。極めてシビアで、かつ、こころ踊る。世界がどんな状況にあろうと、生きるために最も重要なのは芸術(アートではなく)だと思わせてくれる。

(ぼくはけっこう「詩」というジャンルが苦手なのだが、これを観ると、「詩」ってこういうことなんだろうな、と思う。)

あえて言えば、現代的なテクノロジーのなかで、小津安二郎ジャック・タチセルゲイ・パラジャーノフが出会った、というような映画(形式的には)。あるいは、軽やかで渇いたコメディ版『ノスタルジア』(アンドレイ・タルコフスキー)というか(内容的には、いや、国に帰るけど…)。

(監督であり、主人公であるエリア・スレイマンが、劇中で発する言葉は、タクシーの運転手から「どこの国から来た」と問われて答える「ナザレ」「パレスチナ人だ」だけ。)