2023/03/22(

●ネットにエリー・デューリングの「La compression du monde」というテキストがPDFで置いてあった。

https://www.articule.net/wp-content/uploads/2013/03/During_CompressionDuMonde1.pdf

La forme des idées」という《芸術や理論分野での創造的な活動や研究に焦点を当てた、研究・制作センター(ChatGPTによる説明)に提出されたものらしいが、リンクが切れているので詳しいことはわからない(おそらく『Faux raccords : la coexistence des images』の内容の一部を要約的に書いているのだと思われる)。これをChatGPTに日本語訳してしてもらったところ、ちゃんと意味の通る文章になったし、エリー・デューリングが主張しそうなことを主張している。ありがちな、意味が逆になってしまうとか、内容が一般的なふわっと丸い感じにされてしまったり、曖昧に靄がかかった感じにされてしまう、というようなこともないようだ(部分的にあったとしても文脈によって気づける範囲)。

エリー・デューリングのフランス語の本も、ChatGPTに翻訳してもらえば充分に読めるのではないかと思った。

(ただ、せっかく「読めそう」な感じなのに、色々調べても『Faux raccords』の現物を手にするのはかなり困難そうだ。国立国会図書館にはあるみたいなので、登録して、複写してもらうのが一番手っ取り早いのかも。)

●このテキストでは、ポール・ヴィリリオの速度や即時性の概念が、相対性理論を根拠に批判され、古典物理学的な絶対時間の存在しない(同時性が相対的となる)時空での「分断された同時性」を見出す作品として、ダン・グラハムの作品やテレビシリーズ「24」のスプリット画面などが挙げられている。《それは世界の圧縮ではなく、全く新しい種類の圧延です(ChatGPT・訳)

(ここでエリー・デューリングが言っていることは、ぼくが『虚構世界はなぜ必要か?』で言っていることとすごく近いと思うのだが…。)

Virilioは明らかに、彼がしばしば参照する相対論物理学の教訓をほとんど理解していません(特にLa Vitesse de la libération、1995)。彼の構成全体は、疑わしい前提条件によって誘導されています。すなわち、我々は既に速度の限界である「解放の速度」に達しているということです。つまり、よく見ると、瞬時の無限の速度です。しかし、アインシュタインによって1905年に相対性理論が発明されたのは、有限の速度制限(光速)の考えを物理学理論の中心に据えることでした。要するに、組み合わせることができない絶対速度が存在するという点では、既にこの条件を満たしていた無限速度とは異なり、計算や測定が可能な有限速度(c)があるということです。

アインシュタインが提唱するように、絶対的な同時性の概念を捨て、同時性の相対性に移行した場合には、何が起こるでしょうか?つまり、同時性の概念が相対的になる場合には?アインシュタインは彼の有名な「パラドックス」を通して、不思議な空間的・時間的な収縮や膨張の視点的な効果を説明しています。しかし、それは世界の圧縮ではなく、全く新しい種類の圧延です。相対的に分断された地域の流れを簡単に関連付ける普遍的な時間の概念は存在しません。つまり、ある瞬間の宇宙の状態は存在しません。そうすると、共存は再び問題となります。》

24 heures chronoというテレビシリーズは、ある意味ではこの問題を扱っています。シリーズは、並行した物語のラインを配分し、偽の日付やスプリットスクリーンなどを増やすことで、普遍的な時計のカウントダウンによってリズムが整えられた古典的な世界とは全く異なるコントロール空間を表現しています。極限速度の条件下で、遠隔地通信の普遍的なファンタジーとその技術的な中継を実現することによって、わずかな差異が最終的に導入されます。そして、これにより、同時に起こるものが分離され、不完全なカットになる、カレイドコピックで細胞的な多元宇宙が時々表面化するようになります。これは、中断されることのない映像の流れと物語の絶え間ない展開が支配するリアルタイムの虚偽の自明性に反するものです。

●最後のところがかっこいい。

《マンハッタンの地図上に市街地を網羅する監視カメラの全体像を位置づけ、同時に支配の偏執的な地図を作成することは、すでになかなか優れた成果であるが、批判的な行動は、制約のもとでオリジナルな移動方法を刺激し、迂回の実践を発明することで、最も興味深い延長を見出す。監視の死角だけを通るようにできるだけ自分自身を義務付け、迂回路を描き、それによって「監視が最小限の線」に対応するような曲がりくねったルートを作成する。その結果、空間時間の資本管理の原則を回避することができる。要するに、時間をかけることがあっても速度を失わないよう、疑わしい遅さの美点を称賛する必要がないようにするのです。》

●訳文がイマイチだと思った時には、改めて同じところをもう一度訳してもらうのだが、時々機嫌を損ねて、謎の行動をとることがある(ちょっと怖い)。