⚫︎若者の言葉遣いに対しておっさんが難癖をつけるようなことは極力したくないのだが、それでも気になってしまうこともいくつかはある。その一つに、「~させていただきます」という言い回しがある。一体誰に対してへりくだっているのだろうか、普通に「~します」でいいのではないか、という場面で「~させていただきます」と言っている場面に出会うことがかなりしばしばある。ある状況に対して、何かしら影響を与えるかもしれない行為をするときに、その状況の中でそれを行うことを「その状況」そのもの(あるいは、その状況の構成員たち)に対して許していただく、みたいな感覚なのだろうか。
(別にこれは言葉使いだけの問題ではなく、そういう言い回しをすることを強いられている、あるいは少なくとも、そう言っておけば安全だと思わせられるような状況に生きているからそういう言い方をする、ということだろうから、言葉遣いが変だから直せと言っているのではない。そういう状況にあるということがどういうことなのかが気になる、ということだ。)
なぜこんなことを言い出したかというと、台風の中継でレポーターが、「今、建物の影から撮影させていただいているんですが…」と言っているのを聞いて、いやいや、一体何に対してへりくだっているのか、と思ってしまったからだ。今、「台風さま」を撮影させていただいています、ということか。そもそも、なぜわざわざ「建物の影で撮影している」という撮影状況を述べなくてはならないかというと、危険な台風の中にレポーターとカメラマンを派遣することに対しての抗議というか非難が視聴者から来ることが想定されており、それをあらかじめ防ぐために、レポーターもカメラマンも安全には十分配慮して撮影していますよということを、まずことわりとして言っておかないといけないからだろう。だからここでは、台風さまに対してというよりは、視聴者さまに対してへりくだっているのだろう。
防御の壁を何重にも張り巡らしておかないと、不特定多数への発信など怖くてできないという感じだろうか。そのような配慮が必ずしも悪いとばかりは言えないが、それでも、息苦しさを感じることは避けられない。
(もしかすると、建物の所有者に対して、「建物の影」を使わせていただいている、ということかもしれないと気づいた。そうだとしても過剰なへりくだりだが。)