2025-08-18

⚫︎映画美学校製作の『アンティゴネイタス』を観た。映画美学校高橋洋チームの作る映画は常に刺激的で面白いのだが、これは一つの完成形に至ったといえるのではないかと思った。『ソドムの市』の要素、『狂気の海』の要素、『ザ・ミソジニー』の要素のすべてがあり、しかもそれが極めてシンプルな形に収まっているように思う。

今まで精神分析の本や(ラカンは「アンティゴネー」が大好きだ)、樫村晴香のテキストを読んできたのに、ギリシア悲劇について(ギリシア悲劇によって何が語られているのかについて)、今ひとつピンときていなかったのだが、この作品のおかげでようやく少しだけ腑に落ちたように思えた。

画面のどこにも映らないが「法」というものが極めて強くあり、人々は基本的に「法」にしたがって生きていて、悲劇というのはまさに「法」から生まれるのだが、しかし、わずかに、だがとても強く、「法」から逸脱する動きが生じる。それがアンティゴネーとして人格化される。

また、ある配信で山本ジャスティン伊等が「演劇は最低限、空間と言葉があれば、俳優がいなくても成り立つ」と言っていた、その言葉が想起された。この映画には俳優がいるし、俳優の占める役割の重要度が低いというのでもない。しかし、俳優(人間)や風景とは「別に」、法というものが強くある、という感覚がある。そして、「法」は言葉と空間に宿っている(ように見える)。

(ハーマン的に言えば、風景が感覚的性質「的」だとすれば、空間は感覚的オブジェクト「的」と言えるか…。)

高橋洋と山本ジャスティン伊等は、「法」を重要な主題としている日本ではとても稀な作家ではないかと思う。)

(しかし、この映画を外国語に翻訳するときに「お金をクレオン」「こっちにオイディプス」をどうやって訳するのだろうか。決定的に重要なセリフだと思うのだが。)

・短編映画『アンティゴネイタス』脚本・監修:高橋洋 監督:岩崎清香 、八木菜々子、久保地穂乃 、二瓶直也

https://www.youtube.com/watch?v=dpgj5CFH0gk