2025-12-24

⚫︎台北ストーリー』(エドワード・ヤン)をDVDで。ツタヤディスカスで借りた。1985年公開のエドワード・ヤン長編2作目。

この次に作る『恐怖分子』で、エドワード・ヤンは彼のスタイルを確立するのだが、そのちょっと手前のこの感じがちょうどいいような気もする。というか、『恐怖分子』と『クーリンチェ少年殺人事件』は完璧な傑作だが、その次に作る『エドワード・ヤンの恋愛時代』や『カップルズ』より、この『台北ストーリー』の方がずっといい感じではないか、と思った。

(ツァイ・チンの実家の空間とか、とても素晴らしい。)

ホウ・シャオシェンが主演だけでなく脚本にも参加しているためか、ホウ・シャオシェン味がちょっと混じっているというのもいいのかもしれない。ホウ・シャオシェンの映画に出てくる、不良・チンピラ・ヤクザと、エドワード・ヤンの映画に出てくる、不良・チンピラ・マフィアは、明らかに感じが違うと思うのだが、この映画で、空き家をアジトにしているツァイ・チンの妹たちのグループがエドワード・ヤン的な不良で、ホウ・シャオシェンとツァイ・チンの父親との、祖父の代からの地元の繋がりみたいな感じはホウ・シャオシェン的な地縁的「地回り」みたいな関係性だ。

ツァイ・チンの働く都会のオフィスと、ホウ・シャオシェンの家業である布地問屋との「世界」の違いが(それは「空間」の性質の違いとして明らかに現れている)、混じり合うようで、すれ違うという映画だとも言える。

とても素晴らしい映画だというのがまず前提としてあるが、それでもちょっと終わり方が気になるというか、この映画の終わり方に、エドワード・ヤンの持つ、過剰なくらいの「悲劇」への傾倒がすでにこの段階から見えていて、それが不吉な陰のように感じられる。

幼馴染のカップルが、いろいろあった末、よりを戻せそうな感じもあったが、最後には決定的に行き違ってしまう、というだけでこの映画は十分に成り立つと思うのに、最後にとってつけたかのように、ホウ・シャオシェンが「刺される」必要があったのだろうか、と思ってしまった。

それも、最後に唐突に、まったく予想外の流れで刺されるというならまだいいと思うのだが、バイクの若い男がツァイ・チンのマンションの前で待っていて、タクシーに乗ったツァイ・チンがそれを避ける場面を見たところで、結末が見えてしまった感じで、最後にホウ・シャオシェンがこの男に刺されて終わり、だと嫌だなあと思ってしまった。なので最後の30分くらいはずっと、「その結末だけはなんとか避けてくれ」と願うような気持ちで映画を観ることになった。

ツァイ・チンのマンションの前からタクシーに乗って帰宅するホウ・シャオシェンをバイクの男が追いかけてきて、それを知ったホウ・シャオシェンがタクシーから降りてバイクの若い男をボコボコにする。もう、ここまででいいじゃん、と。あるいは、逆襲されてホウ・シャオシェンがボコられる、で、いいじゃん、と思ったが、残念ながら悪い予感通りに刺されてしまう。うーん、やはりそうなってしまうのか、と。

素晴らしい作品だが、ラストの納得のいかなさはどうしても残ってしまう。

⚫︎ホウ・シャオシェンが日本に行った時に録画したという設定の野球の試合が、映画の中で一瞬だけ映る。そこでは広島カープと阪急ブレーブスが対戦していて、バッターが高橋慶彦で、ピッチャーはおそらく今井雄太郎(?)に見えた(本当に今井雄太郎なのかは自信がないが「今井雄太郎」という名前を何十年ぶりかで思い出した)。セリーグパリーグが対戦しているので、日本シリーズなのか、と思って調べたら、1984年の日本シリーズが広島と阪急の対戦だった。