●アマゾンビデオで神山健治の『ひるね姫』を観た。丁寧なつくりで最後までとても楽しく観られたけど、野心的な何かではまったくなかった。あえて東京オリンピックのある三年後の近未来という、いろいろ問題含みの時期を舞台にした、テクノロジー的な主題をもつ物語だと聞いて、ぼくは勝手に非常に「攻めた」感じの内容を期待してしまったので、ちょっと肩すかしではあった。
全体としてふわっとした話だった。様々な細部は既視感ありまくりだし(露骨にアニメ表現の定型を出しているところも多々ある)、物語もとても定型的なところに納められているし、世界観も、まあ普通だ。新鮮だったり、刺激的だったりする要素はない。東京オリンピック後の東京を(夢のなかとはいえ)廃墟としてみせているところが、ちょっとだけ刺激的と言えなくもないけど。まあ、でもそれも普通と言えば普通だ。かといって、退屈なわけではなく、面白いお話として、とてもうまく作られていると思う。お話としてはふわっとしているけど、作品としては引き締まっている。ただ、野心的ではない。神山健治がそっちにいっちゃうのか、というのが残念な気もする。一本くらいは娘がよろこんで観てくれるような映画をつくりたかったのかもしれない。
(でも、父がつくったのだと知って娘がこの映画を観たとすると、ちょっとうざいと感じるのではないかという気もする。)
ただ、ぼくは自動運転の技術に詳しいわけではないからぼくの認識が間違っているかもしれないけど、現状、自動運転で最も必要なのは、優秀なオリジナル・プログラムではなく、出来る限り多くの情報(走行データ)であるはずなので、そこがちょっとひっかかった。