2000-07-01から1ヶ月間の記事一覧
本をパラパラめくっていたら、ページの間に、見知らぬ名前と電話番号をメモした紙が挟んであった。全く憶えがない。それは男の名前で、ぼくは用事もない知らない男の連絡先を聞く趣味などないのだから、おそらく何かしら連絡すべき用事があったのだろうけど…
何日か前に、ようやく今年初めての焦点の定まらない力弱い鳴き声を聞いたばかりだというのに、蝉は、もうそれが聞こえてくるのが当然だとでもいうような調子でずうずうしくジージーと鳴き散らしている。 今にも雨が落ちてきそうな夜9時過ぎ。並木道の真ん中…
何か身近にあるはずのものをなくしてしまい、必死に探すのだけれど見つからず、一体どうしたのだろうと思いながらも、さらに探しているうち、はたと、そういえば自分はまだそのものを手に入れてはいなかったのだ、と思い至り、なんだそれなら見つからなくて…
今日もあつい。ウチから線路を挟んで反対側、踏み切りを抜けてゆるやかに上る坂道の途中にある商業高校のフェンス沿いに並ぶ背の高い並木では、蝉がジージーと大声で鳴いていた。近くの建築現場の隅にある、簡易トイレの換気用ファンがくるくると廻っている…
あけっぱなしの窓から、蜻蛉が迷いこんできた。方向を失ってあちこちの壁にガンガンぶつかって、それでも外へ出られないのでパニックに陥ったらしく、やたらと羽根をバタつかせてはスピードを増しさらに出鱈目な方向へ迷走して激しく何度も壁にぶちあたる。…
台風が行ってしまった後、気のせいか道路の両側に生えている木々の緑が、まるでこちらに迫ってくるようにいつもよりももくもくと茂っていているように感じられる。 道路の端、やや低くなっていて、そこから下水へと通じる穴が開いているところから、まるでわ…
昼過ぎから、すこし眠ろうとしたけど、暑くて寝つかれない。うとうとしたと思うと、嫌な夢で目が覚める。随分と沢山の夢をみた気がするけど、時計を見ると10分とか15分とかしか経っていない。それでも眠いのでまた努力して眠ろうとする。カーテンを閉じ…
新宿駅の自動販売機で缶コーヒーを買ったら、飲み口にガムがべっとり付着してていた。勿論それはすぐ捨てて、なんだかコーヒーを飲む気もなくなってしまって、キオスクでミネラル・ウォーターを買った。水分を身体に入れると、すぐに汗が吹き出る。昔、妹が…
●胸がムカつき、吐き気がするほど暑い。白いシャツ、白い壁、白い看板、催し物用のテントの白い屋根、等に反射した光が眩しく目に突き刺さる。アスファルトからの照り返し。湿気を帯びた熱気が足元から、もわ~っ、と昇ってくる。剪定作業をしている造園業者…