2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧
●『初恋の悪魔』には、様々なレベルで、相容れないものの(中間状態のない、混じり合わないままでの)乖離と同居がある。つまり、相容れないものたちが、相容れないままでどちらも存在できる、そのための「場」の創出こそが問題となっていると思われる。 まず…
●改めて思うのは、『初恋の悪魔』で、林遣都=鹿浜鈴之介の家のリビングに45度の回転が含まれていることがいかに重要であったか、ということだ。 空間に45度の回転が含まれることで、壁に並行して置かれる物入れの棚や、逆の壁に配置されるソファーに対して…
●Netflixで『罪の声』(土井裕秦)を観た。野木亜紀子脚本ということで観たのだが、なんというのか、脚本をそのまま、可もなく不可もなく、ぬるっと映像化した、という印象の映画だった(同じ土井裕秦監督でも、『花束みたいな恋をした』はそんな感じはなかった…
●『初恋の悪魔』について少しモヤモヤするのは、多くの人が林遣都や松岡茉優の演技力、満島ひかりの存在感などを褒め称え、セリフとして語られた多くの美しい言葉に共感したりしているのだが(それらはもちろん称賛されるべきものだが)、でもむしろ、このドラ…
●ほとんど気に掛けることもないまま通り過ぎた過去の些細な断片が、ものすごい生々しさで回帰してきて圧倒される、という経験をした。下の動画を観たのだ。 (もう十年以上か、下手をするともっと長いこと観ていないはずなのに、「サザエさん」のBGMが無意識…
●『初恋の悪魔』、最終話。いい最終回だった。連続ドラマの最終回というものの「完璧な解」の一つなのではないか。ぼくが観ている限りにおいてだが、坂元裕二作品でも最高の最終回ではないかと思う。最後の最後まで緩むことなく攻めていて(どこまでも次々と…
●一昨日からのつづき。引用、メモ。『世界は時間でできている』(平井靖史)、第六章「創造する知性---経糸の時間と横糸の時間」より。想起に関して。 ●想起・エピソード想起(6) ステップ(三)「イメージの現実化」/凡庸化(想起の素材はタイプ的イメージである)…
●昨日からのつづき。引用、メモ。『世界は時間でできている』(平井靖史)、第六章「創造する知性---経糸の時間と横糸の時間」より。イメージと想起に関して。 ●イメージ(1) イメージは自明ではない 《目をひらけば目の前に様々な事物が、色や形、テクスチャを…
●引用、メモ。『世界は時間でできている』(平井靖史)、第六章「創造する知性---経糸の時間と横糸の時間」より。今日は「意識」についての部分。 ●意識とは 《「意識」とは言わずと知れた多義語である。そこで、それらの意味を簡単に以下のように整理しておこ…
●最終回の前に、『初恋の悪魔』が、いかに奇妙な作品であるかについて、ちょっと書いておきたい。 たとえば五話では、娘と孫が事故死したことで逆恨みして、事故に直接関係があるというわけではない役所の男性を、私的制裁として(全く理不尽に)地下室に監禁…
●カクテルパーティー集中(カクテルパーティー効果)というのがすごく苦手だ。たとえば、居酒屋のガヤガヤした喧騒のなかで人と話すのがぼくにはとても難しい。背景音(地)としてあるべき喧騒の方が「図」となってしまい、相手の言葉に全く集中できない。同様に…
●Netflixで『サイバーパンク エッジランナーズ』、最後まで観たが、ぼくにはダメだった。技術もすごい、背景の分厚い世界観の作り込みも素晴らしい、アクションがすごい、演出もデザインも作画も音楽もかっこいい。そういう点では稀に見る驚くべき作品だと、…
●U-NEXTで『遠くへ、もっと遠くへ』(いまおかしんじ)を観た。変な言い方だが、普通にとても良かった。確か、林由美香の『たまもの』でもそうだったと思うけど(随分観ていないので細かいところは覚えていないが)、ふわっとした感じの「かまとと」とも言われて…
●『初恋の悪魔』、第九話についてもうちょっと。一方で、弟から見た兄があり、もう一方で兄から見た弟がある。これが分離したまま自律しているのは、弟と兄の間に断絶があり、通路がないことによる。同様に、一方に松岡1がいて、他方に松岡2があって、その二…
●『初恋の悪魔』、第九話。体感15分だった。 前にも書いたが、坂元裕二の脚本は細かいところを見ると結構つっこみどころがある。今回でも、例えば、満島ひかりの「人格」を変えてしまうくらいのハードな取り調べを、たかだか刑事(伊藤英明)一人の意向で実現…
●Netflixで『サイバーパンク エッジランナーズ』の四話から六話まで観た。途中までは、こんなに高密度でかっこいい背景世界を作っているのに、「少年が裏社会でのし上がっていく青春物語」みたいな単純な話のままだったら嫌だなあと思っていたが、五話の途中…
●Netflixで『サイバーパンク エッジランナーズ』を三話まで観た。久々に「キターッ」という感じのアニメだが、不安なのは、ぼくがどうしても『キルラキル』を好きになれなかったというところだ(監督、製作会社が同じ)。基調となるトーンから、細部の一つ一つ…
●八十年代のアイドルの動画をYouTubeで延々と観ているうちに一日が終わるという自堕落な過し方をしてしまった。だが一つ発見があって、それは「田原俊彦はすばらしい」ということだった。髪をキュッと上げた男っぽい田原俊彦ではなく、初期の、髪をふわっと…
●ゴダールを初めて観たのは1983年。高校一年の時。当時、有楽町の駅のすぐ近くにあった有楽シネマで『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』の二本立てを観た。「思ってたよりずっと普通…」だと感じて軽く失望した記憶がある。「ゴダールすげえ」と思ったのは…
●山本浩貴(いぬのせなか座)による「死の投影者(projector)による国家と死---〈主観性〉による劇空間ならびに〈信〉の故障をめぐる実験場としてのホラーについて」(「ユリイカ」2022年9月号特集「Jホラーの現在」)にとても刺激を受けた。ホラー表現において、…
●昨日からのつづき。引用、メモ。『世界は時間でできている』(平井靖史)、第五章「空間を書き換える---」より。 ●純粋知覚論 《こうした水路づけのプロセスを、現存の生物たちの背後に描き出すことで、ベルクソンが示そうとしていたのは何か。それは、身体と…
●引用、メモ。『世界は時間でできている』(平井靖史)、第五章「空間を書き換える---折りたたまれた時間」より。 ●運動記憶(空間=知覚システムの創発) 《(ベルクソンは…)基礎的な生物よりもさらに下、「物質」そのもののうちに運動記憶のルーツを見定める。…
●『初恋の悪魔』、第八話。前回までゴマ塩頭だった伊藤英明の髪がいきなり黒く染められているのが怖すぎる。しかも、作中で誰もそこを突っ込まない。物語の本線とはおそらくあまり関係ないのだろうが、そういう細部がいろいろ効いているのも、このドラマの面…
●U-NEXTで『MEMORIA メモリア』(アピチャッポン・ウィーラセタクン)が観られる。 アピチャッポンは、映画というものの全く新しいステージというか、二十世紀的映画とは全く異なる何かを出現させていると思う。この映画の長い長いワンカットは、「長廻し」で…
●引用、メモ。『世界は時間でできている』(平井靖史)、第四章「身体とシンクロする世界」より。 ●表象主義への批判(表象を介さない知覚) 《(…)表象は物自体ではない。それはどこまでも「私が推定した世界」でしかない。ひとたび現象と物自体を区別してしまう…
●『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(青山真治)がYouTubeにあったので観た。ぼくにとって、青山真治の映画のなかでもっともピンとこない作品。今回観てもやはり、うーん、という感じだった。観始めてしばらくして、これは黒沢清の『大いなる幻影』から着想を…
●27インチモニターの中古のiMACを、けっこう格安で購入することができた。いろいろ触ってみて、MACのモニターの美しさ(5K対応)にはとても満足なのだが、Windowsとの違いにかなり戸惑っている。たとえば単純なことだが、ウインドウやファイルを閉じる時にクリ…
●これは美大受験生あるあるだと思うが、『世界は時間でできている』(平井靖史)の第四章「身体とシンクロする世界」を読んでいたら、「回り込む空間が描けていない」という話がでてきて、懐かしく思った(平井靖史は美大出身)。 《私が受験のために美術予備校…
●保坂和志の小説的思考塾をリモートで視聴。自治とか拠点をつくるという話と、文体をつくるという話。 ●まず、最後のほうでゲストとして出た山本浩貴さんが話していたことで、ああ、と思うことがあった。文芸誌の新人賞に出した小説が最終選考まで残ったが受…
●『初恋の悪魔』、第七話。坂元裕二がすごいと思うのは、インフルエンサーみたいな新しいネタをもってきて、一見それを(常識通りに)否定的に扱っているようにみせて、しかし、そこにきちんと「厚み」をもたせているところだ。こういうところで信用できると思…