2022/09/13

ゴダールを初めて観たのは1983年。高校一年の時。当時、有楽町の駅のすぐ近くにあった有楽シネマで『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』の二本立てを観た。「思ってたよりずっと普通…」だと感じて軽く失望した記憶がある。「ゴダールすげえ」と思ったのは、翌年、1984年に六本木のシネヴィヴァンで『カルメンという名の女』を観た時が最初だった。

(記憶では、どちらが先かよく憶えていないのだが、上映時期を調べたら有楽シネマの方が先だった。)

初めて買ったビデオソフトが『女と男のいる鋪道』だった。おそらく84、5年。八十年代はまだビデオソフトがとても高価な時代で、一本一万数千円したと記憶している。アンゲロプロスの『シテール島への船出』(『アレクサンダー大王』だったか?)とどちらにしようか店頭ですごく迷った(どちらもフランス映画社から出ていた)。確か、渋谷の西武で買ったのだったと思う。

当時、名画座は多くあったが、ゴダールが手軽に観られるという環境ではなかった(東京に住んでいたり、大学生だったりしたら違ったかもしれないが、神奈川の西の方の田舎に住んでいる高校生だった)。ビデオソフトを買ったのも、それを手元に置くためというより、それを「観る」ためだ(ソフトを買った時点では『女と男のいる舗道』を観ていなかった)。一万数千円出さなければ、ゴダールを観ることが出来なかった。レンタルビデオもあまり一般的ではなかったし、あったとしてもゴダールなど置いてなかった。

また、ゴダールといえば、映画以上に『ゴダール/映画史』という本に影響を受けた。この本は繰り返し、繰り返し読んだ。

ゴダールが、『ゴダールの映画史』以降、20年以上も生きて、5本も長編を作ったというのはすごいことで、やはり、可能であれば長生きはするものだと改めて思う。

(『勝手にしやがれ』から『ウイークエンド』までが17年、間に『楽しい知識』から『ヒア&ゼア こことよそ』までの9年の政治の季節を挟んで、『勝手に逃げろ/人生』から『ゴダールの映画史』までが18年、晩年と言える『愛の世紀』から『イメージの本』までが17年。)

(今でも、好きなのは八十年代から九十年代半ばくらいまでの―つまり『映画史』より前の―ゴダールだが、今、改めて観てみたいと思うのは『さらば、愛の言葉よ』の3Dだ。)