2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧
●夜、7時過ぎ。雨でしっとりと湿ったその一方通行の狭い道路は、建て込んだビルに囲まれて、二つの通りを繋いで通っている。道幅いっぱいに二列に並んだ自動車(その半分以上がタクシーだ)が、(一通から抜ける、先の信号でつっかえているので)しばらく走って…
●瀬々敬久『ユダ』(がどうして面白くないか)について、もうちょっと考えてみる。 ●『ユダ』という映画は基本的に二つの主観の交錯(と、その交錯に場を与える支える三つめの視点)によって出来ている。つまり、二人の人物によってそれぞれに捉えられた「ユダ」…
●瀬々敬久『ユダ』、山下敦弘『くりいむレモン』をDVDで。 ●『ユダ』を観ていて思ったのは、作品が「現在」を捉えようとする時に陥ってしまう罠のようなものだ。この映画で、実際に起こった事件、16歳の少女、東京から電車で一時間くらいの郊外の街、等の、(…
●宣伝を二つ。二つの雑誌が届いていた。 ●「風の旅人」(vol.18)に、『芸術への「信」と、私の「身体」』というぼくの書いた文章が載っています。これは「現代生活のなかの絵画」というタイトルの連載で、次号以降もつづく予定。(二回目の原稿も受け取っても…
●昨日の日記を書いた後、ビクトル・エリセの『エル・スール』をDVDで観てから寝ようと思ったのだけど(何年ぶりに観たのだろうか)、そのあまりの素晴らしさに感情が昂ってしまって、朝までまったく眠れなくなってしまった。しょうがなく起き出して、朝方にこ…
●昨日の日記で高橋悠治が入院したときの文章を引用した。例えば次のような。 《病院の夕食は五時。その後はもう、することがない。自分のベッドのまわりにカーテンを引き回し、消灯時間を待たずにしずかになる。それぞれの病気だけを相手に夜をすごすのだ。》…
●夕方になってから表へ出てみると、思いのほか日が延びている(というか、暮れるのが遅くなっている)のを感じた。 ●昼間眠っていて夢をみた。着ている服の袖口のあたりから、粉をふいたような小さな白い虫がぞろぞろと這い出てきたので驚いて服を脱ぐと、身体…
●小島信夫『抱擁家族』。この小説は以前に何度も読もうと試みたことがあるが、いつも最後まで読み通すことが出来ないでいた。『残光』、『女流』と読み継いだ今なら、何とかいけるんじゃないかと思って読み始めたのだが、この、大して長いわけではない小説を…
●宮崎駿『ハウルの動く城』をDVDで。主要な登場人物ほぼ全ての外見が安定していないことがこの映画の「とっ散らかり」ぶりを示していて、軸になるような物語も世界観もなく、ただ次々と新しいシーンが「見せ場」として連なっているだけにみえる。しかし一方…
●昨日と今日とで、ずっと原稿を書いていた。この原稿は絵画に関するエッセイ(一応「現代生活のなかの絵画」というタイトルがついている)の二回目で、一回目はもうすぐ出る雑誌に載るはず。(雑誌が出たらここでも宣伝します。)一回目は自己紹介と言うか、自分…
●カフカに関する二つの引用。メモ。 ●《我々は朝目覚めたときに、そこが夢の世界ではないことにすぐ気がつく。たった今まで真剣に夢を見ていたのに、夢だったのか、で済ませてしまう。たとえば夢の中でどこかへ行き着こうとして、どうしても行き着けないよう…
●昨日、4月にA−thingsでする展示について打ち合わせしている時に、最近、新作はつくっているんですか、と聞かれたので、ちょっと今までと違った感じのドローイングをしていて、それはまだ形になっているようなものではなくて、今後どうなってゆくかま…
●夕方から用事があって表に出ると凄く寒い。6時過ぎで既に暗く、寒さのためか人通りのほとんどないアパートの前の通りに、冷たい風の吹き渡る音がやけにピューピューとたって耳につく。用事が終わった帰り道、寒いので駅の自動販売機であたたかい缶コーヒー…
●渋谷のシネカノン試写室で、長崎俊一『闇打つ心臓』。82年につくられた長崎監督の8ミリ映画『闇打つ心臓』の引用と、その物語を23年後に反復する現在の若者たち、そして、82年版『闇打つ心臓』の登場人物たちの23年後の物語が重なり、それらを束ねるものと…
●坂道を昇ったり下ったりする時に身体が感じていることを、実際に昇ったり下ったりしながら捉えなおそうとする。それは、身体の隅々までの細かい動きを意識するということではなくて、そういうことはなるべく意識しないで身体に勝手にやらせておいて、その場…
●昨日の日記でチェルフィッチュの『目的地』について、俳優の発する言葉が観客へ直接向けられている(観客に対して直接的に関係する)というようなことを書いたけど、そのような決めつけはちょっと単純(乱暴)すぎたかもしれないという気もする。「〜についてや…
●テレビでやっていたチェルフィッチュの『目的地』は凄く面白かった。途中で何度か泣きそうになるくらい感情が高揚した。ただ、テレビで(つまり映像化されたものとして)観るのではよく分からないけど、実際にどうなのかすごく気になる点は、「観客に向かって…
●「残光」(「新潮」2月号)を読んだいきおいで、つづけて『女流』を読んで、小島信夫を面白く読むコツというか、小島信夫という作家の面白さの一端が少しだけ掴めたように思えた。『女流』という小説で描かれる「お話」や人物、例えば満子のような有閑マダム…
●アルモドバルの『バッド・エデュケーション』をDVDで。さすがにアルモドバルだけあって、これだけ様々な要素をてんこ盛りに詰め込んで、しかし全体としてはすっきりと100分ちょっとで纏めてある。個々の要素はギトギトなのに、全体の印象はあっさりしている…
●小説のなかに実在する地名やその風景が描かれる時(つまり、実在する「ある領域」が示される時)、それは一体どういう効果をもつのだろうか。随分の話だけど、学生の頃に友人が、新宮に行くと中上健次の小説の通りに歩くことが出来る、というようなことを言っ…
●昨日の日記で、細かいところに文句をつけたりしたけど、柴崎友香の『また会う日まで』(「文藝」2006春号)は、全体としてはとても面白かった。『フルタイムライフ』(あるいは「ショート・カット」にもその萌芽は感じられたかも)あたりからみられはじめた、柴…
●「文藝」に載っている柴崎友香の小説(「また会う日まで」)を読んでいて(まだ半分ほどしか読んでない)、大阪から東京に遊びに来ている主人公の女の子が、高校時代に微妙に気になっていた男の子に会うために埼京線に乗っている場面で、車内で、黒髪が印象的な…
●鈴木清順の『オペレッタ狸御殿』はあまり面白くなかった。まず、企画として徹底的に駄目だと思う。ミュージカルだけど、音楽も踊りもいまひとつでも、鈴木清順ならなんとか映画に出来るだろう、装置にもそれほどお金はかけられないけど、デジタル合成を使え…
●「新潮」の2月号には読むところが沢山ある。まず、いつもの通りに保坂和志の連載を読んでから、青木淳悟(「いい子は家で」)、中原昌也(「点滅......」)、小島信夫(「残光」)、福永信(「寸劇・明日へのシナリオ」)(読んだ順番)、の小説をつづけて読む。 小島…
●『ミリオンダラー・ベイビー』(クリント・イーストウッド)を、ようやくDVDで観た。途中までは、ほぼ完璧な「アメリカ映画」として、何の疑問もなく素晴らしく、イーストトウッドはやっぱすげえ、とか思って、ただただ受け入れて堪能していた。特に、イース…
●スピルバーグの『宇宙戦争』をDVDで。軍隊は出てきても、軍隊を指揮する人が出てこないということにこの映画の特徴はあらわれていて、つまり登場人物の目の前で起こっているいることだけが全てで、それが(我々が「知っている」と思っている)世界の秩序のな…
(昨日からのつづき) ●元日の散歩は、昨日書いた海岸あたりだけでは終わらず、ポケットに小石を詰め込んだ重たいジャケットをひっかけつつ、延々5時間くらい歩きどおしだった。大磯にはぼくが通っていた高校があり、その高校は海岸から防波堤と一本の道路を挟…
●正月は実家に帰っていた。ぼくの実家は神奈川県の海沿いにある平塚というところなのだが、海からそれほど近いわけではなく、家のすぐ近くの川に沿って下流の方へ歩くと、だいたい4、50分で海に着くというくらいの位置にある。で、実家に帰って時間があると…