2003-11-01から1ヶ月間の記事一覧

03/11/30

●多和田葉子『容疑者の夜行列車』。これは面白い。この小説の主人公は徹底した移動する「感覚受容器」であって、自らの身体をイメージとして(想像的に)把握することをしない。つまり統合された自己像をもたない。このことは、主人公が常に「あなた」と呼びか…

03/11/29

冷たい雨の降る土曜日でも、解体された駐車場の工事は行われていた。地面に深い穴をあける長いドリルをつけた背の高いクレーンは、自らあけた穴に鉄柱を埋め込むためにワイヤーで鉄柱を吊り上げる。(目隠しの幌が張られているので下の方は見えないのだが、お…

03/11/28

●吉田修一『東京湾景』。これって『パーク・ライフ』と似ているのじゃないかと思って、『パーク・ライフ』もさらっと読み返した。どちらも男と女が不思議な状況で出会い、それによって不思議な距離感を持った関係が生じる。そのとき、男にはずっと引きずって…

03/11/27

部屋のなかにいると寒くて外へ出るのが億劫になるのだけど、一旦出てしまえばこのくらいの寒さはむしろ心地よくて、ちょっとした用事のためにわざわざそこまで行くのは面倒だと思っていた道行きが、久しぶりに散歩に出たような感じで、歩いているうちに次第…

03/11/26

大きな駐車場だったところを壊して4階建ての建物を建てるそうで、そのまわりに鉄パイプで組んで幌を張った目隠しが立てられ、工事用の車両が出入りする巨大なアコーディオン・カーテンのような、鉄板で出来た扉も設置された。目隠しされているので中は見えな…

03/11/25

電車がホームに着き、扉が開く。扉が開いた途端に入ってくるシャーッという音は、雨の降っている音なのか、それとも湿った道路に車のタイヤが滑ってゆく音が遠くから聞こえているのだろうか。雨の日の電車の籠もった空気に、外の冷たい空気が混ざる。電車の…

03/11/24

西尾維新『きみとぼくの壊れた世界』。薄味と言うか、もっと短く書くべき題材を水増しして引き延ばしたように感じられてしまうのは、以前の作品(ぼくが読んでいるのは『クビキリサイクル』と『クビシメロマンチスト』、『クビツリハイスクール』)では、その…

03/11/23

●昨日につづいて、ギャラリー千空間の堀由樹子・展について。(と言えるかどうか...) ●(2)時間(の厚み)について。単純にコミュニケーションの効率性という意味では、作品をつくることはおそろしく効率の悪い行為であり、それを普遍性と言ってしまってよいのか…

03/11/22

●ギャラリー千空間の堀由樹子・展について。 ●(1)空間について。一階の展示スペースには『passage』と『quiet garden』という作品が並んで展示してある。この2点の作品のタイトルと並置には、堀由樹子という画家の現在の有り様がきわめて明快に示されている…

03/11/21

●用事があって市役所まで自転車で行った。市役所は大きな川沿いにあって、緑の芝生の敷かれた市役所前の土手には汗ばむほどの暖かな日が降り注ぎ、ちょうど昼時のせいか、ジョギングをする人、犬を連れている人、寝そべったり、しゃがみ込んだりしている人、…

03/11/20

●目的もなくネットを彷徨っていた時に、前後の脈略と関係なくふと目についた言葉に次のようなものがあった。それは学生が大学の教師から言われた言葉で、ある論文が良いものかどうかはプロであれば一目瞭然で判断できるが、それはプロでなければ分からないの…

03/11/19

●昨日、横浜美術館で買ってきた『中平卓馬の写真論』に収録されている『なぜ、植物図鑑か』を読んだ。これを読むと、中平氏が自分自身の作品に対して驚くほど自覚的であることが分かる。このエッセイは70年代のはじめ頃に書かれたものだろう。70年代とはどの…

03/11/18

●横浜美術館で中平卓馬・展。恐らく中平氏だと思われる人が、恐らく奥さんだと思われる女性と二人で展示室にいた。奥さんだと思われる女性は、会場のベンチに腰をおろして、ゆったりと本を読んでいて、中平氏だと思われる人は、写真に触れるのじゃないかとい…

03/11/17

毎年のことなのだが、K街道(こういう書き方をすると私小説っぽい感じになる)にずっと立ち並ぶイチョウ並木のギンナンが、昨日、一昨日あたりの強風で道路に随分と落下していて、それを往来する自動車のタイヤが踏みつぶした上に道路に擦り着けてゆくので、道…

03/11/16

ついちょっと前までは、炒めたタマネギみたいに染まったメタセコイアの葉が傾いた位置から射す日の光を受けて背景の空の青から浮き上がるように金色に輝いていたのだけど、日が沈み、空はまだ明るいものの地上が徐々に薄暗くなってくると、背景の空よりも暗…