03/11/26

大きな駐車場だったところを壊して4階建ての建物を建てるそうで、そのまわりに鉄パイプで組んで幌を張った目隠しが立てられ、工事用の車両が出入りする巨大なアコーディオン・カーテンのような、鉄板で出来た扉も設置された。目隠しされているので中は見えないが、背の高いクレーン(物をつり上げるためのではなく、長いドリル状のもので地下深くまで穴を掘るためのものらしい)がにょっきっと頭を出していて、コンクリートを砕く音が振動を伴って伝わってくるし、重たい金属をぶつけ合わせたような高い音が、近くの団地に跳ね返って生じた「こだま」と混じって、重なったりズレたりしながら響いてもくる。南からの強い日射しが、幌の表面に目隠しされたその内側の影を浮かび上がらせ、荒く吹く風がスクリーンとなった幌を揺らしてバタバタッと音をたてる。その風が、一面に日の光を受けてそそり立つ高層マンションの南向きのベランダにずらっと並んで干されている色とりどりの布団を、ふわっとめくり上げては、ストンと落とす。それがスタジアムの観客がするウェーブのように伝わってゆく。駐車場の解体の伴って切り崩された植え込みの、それでも残された一部分で茂っている木々の葉も、荒っぽい風にあおられてザラザラした葉擦れの音をたてている。植え込みの前を、小学生くらいの男の子の6、7人の集団が、相手をからかい囃し立てつつも同時に不満を表明するときにあげるような、えーっ、という声を、声をそろえて一斉に発しながら歩いてゆく。そのなかの黄色いパーカーを着た一人が、もっと、ふぇぇぇーっ、っていう感じで、と皆に指導し、集団は再び一斉に、ふぇぇぇぇーっ、という声をあげるのだった。