●店の軒先などから出ている、幌と言うのか、日よけと言うのか、折り畳み式の骨組みに張られている、ハンドルをくるくる回すと出たり引っ込んだりするような、頭上に張り出ている防水加工された布が、バサッ、バサッ、と大きな音をたてながら、まるで海中にいるエイがひらめくみたいに波打つほどに強い風が吹いている。大きくはためき波打つ布についた金具が、金属で出来た骨組みにぶつかって、カーン、カーン、という甲高い音が響く。生暖かくホコリっぽい花粉混じりの風が舞い上がり、吹付けてくる。何の気なしに手で触れた店のショーウインドウがざらついている。坂にさしかかった自動車がエンジンをふかし、濃い排気ガスを排出し、キュッと音をたてるタイヤが砂ぼこりをあげる。天気予報によると、春一番ではなかったらしい。