2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『ネオリベ現代生活批判』の樫村愛子のインタビューで興味深いのは

●『ネオリベ現代生活批判』の樫村愛子のインタビューで興味深いのは、ネオリベ的なものと六八年的なものが通邸しているという(そうとも読める)指摘だ。無意識に埋め込まれ作動する「共同体的なもの」や、個と社会を繋ぐ中間的な媒介としての「文化(記憶)」に…

●なぜか一日やたらと眠くて、ぼーっとして、本を読んでもまったく頭にはいらない。『「戦時下」のおたく』に載っていた、榎戸洋司のインタビューを読んで気になっていた『忘却の旋律』というアニメの、最初の4話分を観ていたのだが、これは全く面白くなくて…

『地の果て 至上の時』(中上健次)を半分ほど

●『地の果て 至上の時』(中上健次)を半分ほど(第二章まで)久しぶりに読み返してみて、この小説の「大きさ」に圧倒される。この「大きさ」とはいわば「空っぽな空間」の大きさのことで、この小説はつまり、巨大ながらんどうのなかに、様々な位相の物語が放り…

●お知らせ、と言うか、宣伝を二つ。 (1)京都大学の11月祭のイベントとして、作家の星野智幸さんと対談することになりました。テーマは、なんと「再考:中上健次」。日時は、11月26日(土)、開場一時半、開演二時(〜四時半)。場所は、京都大学法経七番教室。詳…

●「ユリイカ」の、「文科系女子カタログ」という特集に執筆されている小澤英実という方から、ぼくが以前に書いた『少女革命ウテナ』に関する文章(http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/yo.32.html#Anchor1863148)を引用したという報告をメールでいただい…

●『小説の自由』の刊行にあわせて今年の夏に青山ブックセンターで行われた、小島信夫×保坂和志のトークショーの模様を録音したCD-Rをいただき、それをiPodに入れて、一日じゅうくり返して聞いていた。この対談の「内容」についてなら、「考える人」という雑…

●気持ちのよい秋晴れの日、吉祥寺の井の頭公園で、日射しに照らされてキラキラ光る池の脇に腰をかけて、昼間っからビールを飲みつつ、強く照りつける光、その光を細かく砕いて反射する水面、光のなかでゆらゆら揺れる木々の緑を目の当たりにし、浴びつつ、池…

『奇蹟』における「路地」という環境のリアルなたちあがりを支えてい

●『奇蹟』における「路地」という環境のリアルなたちあがりを支えているのは、それを記憶し、語る人としてのオリュウノオバの存在であろう。登場人物たちの悲劇的な生や死を救う能力があるわけでは全くないオリュウノオバだが、しかしこの小説で焦点化される…

ちょっと必要があって、中上健次『奇蹟』を読んだ

●ちょっと必要があって、中上健次『奇蹟』を読んだ。陳腐な言い方ではあるが、やはり、圧倒される、と言うか、揺り動かされるような「読む」体験だった。「SPA」に出ていた福田和也と坪内祐三の対談で、大江健三郎の『さようなら、私の本よ!』に触れていて、…

大江健三郎と伊丹十三

●大江健三郎の『さようなら、私の本よ!』に、塙吾良の「ダンデライオン」(伊丹十三の『タンポポ』)をアメリカで観て、彼は詩人だと思った、ということを言う、中国系の女性(清清)が出てくるのだけど、あのエグい映画を観て「詩人」とか思うというのは、どう…

●昼頃に家を出た時には曇っていたのに、銀行、文房具屋、スーパーなど、近所でいくつか用事を済ませてまわるうちに、かかっていた雲が徐々に散っていって、だんだんと日が強く射してきて、暑いほどになり、羽織った上着の内側で軽く汗が滲み出てくる。 ●しか…

『フリクリ』(3)〜(6)

●『フリクリ』(3)〜(6)。これはたんへん充実した作品だと思う。ちょっとついていけないような「アニメ」独特のノリが濃厚にあって、そういうものに拒否反応を示す人にはキツいかもしれないけど、しかしこの作品の充実は、そのような「独特のノリ」の高濃度な…

●(いかにも時期外れの話だけど)iPod miniを買ってから随分たつのだが、ぼくのパソコンの古いOSやiTunesがそれに対応してなくて、ずっとたんなる「ブロック崩しゲーム」でしかなかった。なぜ、さっさと新しいバージョンにアップデートしなかったかと言うと、…

ある犬の話

●何日か前、テレビのバラエティー番組の、素人投稿ビデオの海外編みたいなので観て、気になった映像。夢中になって骨に齧りついている犬が、耳の後ろを掻く自分自身の後ろ足を、餌(骨)を狙っている敵と勘違いして、威嚇し、噛み付こうとする。自分自身の頭部…

マイケル・フリードと綿矢りさ

●マイケル・フリードのミニマリズムの作品に対する批判は、ミニマリズムの作品が「観者」に対して存在していること、つまり、作品が、観者(の身体)への(直接的な)「効果」によって組み立てられていること、への批判でもあった。対して、フリードが良いとする…

●今日はゴダールの『アワーミュージック』を観に行こうと思っていたのだが、朝方から大江健三郎の『さようなら、私の本よ!』を読み始めていて、この小説を読んでいたら、無性にアルコールが欲しくなり(そういう小説だということは読めば分かると思う)、午前…

『インストール』(綿矢りさ)

●『インストール』(綿矢りさ)を読んで、16、7歳でこんなのが書けてしまうのか、と驚いたのだけど、では、面白いのかと言えば、そんなには面白くない。どちらというとぼくには、「お話」として上手く纏まっている『インストール』よりも、『蹴りたい背中』の…

『マインド・ゲーム』(湯浅政明監督、ロビン西原作、2004)

●10月10日にアニメについて書いたら、ある人から『マインド・ゲーム』(湯浅政明監督、ロビン西原作、2004)という作品を勧められたので、DVDで観てみた。 大雑把に分けて、アニメには「おたく系」と「アート系」とがあるように思う。「おたく系」は、おたく…

綿矢りさ「You can keep it.」

●ぐずぐずとはっきりしない天気が一週間近くつづいた後の、昨日、今日は、とても気持ちよく晴れていた。平日の午前の通行量の少ない道路で信号待ちで立ち止まっていて、目の前を、三台つづけて大きなトラックが早い速度で乱暴に走り抜けてゆく時、その振動す…

●夜遅くなってからビデオを返すために出かけ、人気も街灯もなく家々の窓から漏れる光と、たまにある自動販売機の(そこだけは眩しいくらいの)光だけに照らされているような暗い住宅街の細道を縫うように歩いていて(近くのツタヤまで、そんな道を片道十二、三…

●いちょう並木のある大通りの歩道は午後まで細々と残っていた雨で湿っていて、そこに木から落ちて踏みつぶされた濡れたギンナンが道路に沿ってずっと散らばっていて、湿った空気で強調された癖のあるにおいが漂っていた。このにおいは毎年のことだ。(以前は…

『真夜中の弥次さん喜多さん』と『フリクリ』

●宮藤官九郎の『真夜中の弥次さん喜多さん』は最近観た映画のなかでは『スクラップ・ヘブン』と並ぶくらいのひどい映画で、クドカンが監督としての能力がないのは仕方がないとしても、この、原作の上っ面をなぞっただけのような何の工夫も感じられない脚色で…

佐藤弘『拍手と手拍子』

●「新潮」11月号に載っていた、佐藤弘の新人賞受賞後の第一作『拍手と手拍子』は良かった。出だしを読んでいる時は、文章が妙に上滑りする感じが良くなくて、新人賞をとった『真空が流れる』は結構好きだったけど、二作目は「外れ」だなあと思って、読むのを…

ジム・ジャームッシュ『コーヒー&シガレッツ』

●ジム・ジャームッシュ『コーヒー&シガレッツ』をDVDで。 ●考えてみれば、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の面白さは、それが、物語によってでも構造によってでもなく、それぞれの「場面」の力のみによって成り立っており、個々の場面がただ並列され…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』(2)

●『銀河ヒッチハイク・ガイド』のテレビ・シリーズのDVDのパート2(第4話から6話分)を観た。このシリーズの面白さは、個々のネタの面白さにあるのでもないし(個々のネタはあまり面白くない)、SF的なネタが「宇宙論的な深読み」を誘うというところにあるのでも…

ポール・トーマス・アンダーソン『マグノリア』

●『ハードエイト』(9/26の日記参照)が、やたらとカッコ良かったので、もう一度確かめてみようと『マグノリア』を観直してみたのだが、やはりこれは全然駄目だと思った。複数のエピソードを細切れに同時進行的に示し、当初バラバラだった断片の関連性が次第に…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』(1)

●粒が細かく、舞うようにして降ってくるので、大した降りではないのに、傘をさしていても知らぬ間にじっとりと濡れてきてしまうような雨のなかを、用事があって、新宿の都庁周辺の巨大なビル群を歩く。 ●『銀河ヒッチハイク・ガイド』のテレビ・シリーズのDV…

上野の森美術館のポルケ展

●上野の森美術館のポルケ展で唯一面白いと思ったのはやはり「不思議の国のアリス」(1971年)http://www.ueno-mori.org/special/sigmar_polke/で、さすがにこれだけは良い作品だと思った。 既にプリントされている布を「地」として使い、その上に(と言うか、そ…

府中市美術館の「アメリカ-ホイットニー美術館コレクションに見るア

●昨日観た、府中市美術館の「アメリカ-ホイットニー美術館コレクションに見るアメリカの素顔」展の作品について、ランダムにいくつか書く。 ●リキテンスタインというのは「画家」なんだなあ、と、その作品を実際に観るたびに思う。例えば、この展覧会では、…

府中市美術館の「アメリカ-ホイットニー美術館コレクションに見るア

●ずっと気になっていたのに行きそびれていた、府中市美術館の「アメリカ-ホイットニー美術館コレクションに見るアメリカの素顔」展を最終日にやっと観ることができた。重い腰をあげることが出来たのは、こんな日に外へ出ないのはもったいないというくらいの…