2002-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『うる星やつら2・ビューティフルドリーマー』(監督・押井守)を十何

●ビデオ屋に、昨日観たビデオを返しに行った時、ふと目にとまってしまった『うる星やつら2・ビューティフルドリーマー』(監督・押井守)を借りて、十何年ぶりかで観直した。ぼくがこの映画を初めて観た頃、主人公の「あたる」と同じ高校生だったわけだが、改…

ジャ・ジャンクー『プラットホーム』

●今頃になってやっと、ジャ・ジャンクーの『プラットホーム』をビデオで観ることが出来た。これは、この監督がもの凄く映画が好きなのだということがビシビシ伝わってきて、しかもそれがマニアックにスレたりしなくて、とても幸福な形で自分が語りたい「物語…

●自転車が、山を越えるための登りに差し掛かるとすぐに右手に見える斜面は、木がきれいに刈られていて、夏には濃い緑の雑草が伸び放題だったのが、今ではその全てが黄土色に染まりうなだれるように倒れ地面に頭を垂れている。昨晩の寒さで霜がおり、黄土色の…

昨日につづいて、吉田秀和『セザンヌは何を描いたのか』

(昨日につづいて、吉田秀和の『セザンヌは何を描いたのか』について) ●この本はとても平明でありながらも突っ込んだ分析がなされていて素晴らしいのだが、ぼくなんかからみるとやや記述の言葉が文学的に過ぎるように感じられるところが気にならなくはない。…

吉田秀和『セザンヌは何を描いたのか』

●古本屋で吉田秀和の『セザンヌは何を描いたのか』(白水社)というごく薄い本をみつけた。これがとても面白かった。簡潔で平明な文章で、セザンヌの一枚一枚の作品について鋭い分析がなされてゆく。しかも、とりあげられている作品のほとんど全てについて、モ…

オリヴェイラ『家路』

●ビデオが出ていたので、オリヴェイラの『家路』を見直す。こういうのが「巨匠の仕事」と言うのだろう。この映画によって捉えられた「街角」のざわめきや、佇まい、空気の震え、光、そしてそのなかをゆっくりと歩いて通り抜けるひとりの老人の姿は、こういう…

●自転車で山をひとつ越える。ずっとつづく坂でペダルを踏みつづける。冷たい風が吹き荒れて吹きつけ、手や顔の皮膚を硬直させる。身体の内部では熱が発生し、服で覆われた部分はじっとりと汗が染み出す。股の筋肉が張り、呼吸がはやくなる。荒い呼吸で口のな…

昨日に関連して、少し。フリード『芸術と客体性』とか

(昨日に関連して、少し。) ●マイケル・フリードの『芸術と客体性』というテキストは、非常に魅力的でありかつ難解である。部分的には明快で説得力に富み、部分的には錯綜している。そこでフリードは自らが敵としているリテラリズム=ミニマリズムの作品に対す…

抽象表現主義と絵画の終点

●ぼくが美術に本格的に興味をもったのは抽象表現主義からで、現在でもその影響を否定するつもりはない。しかし、抽象表現主義とその周辺、つまり50年代から60年代のアメリカ型フォーマリズムの絵画や批評が、あたかもモダニズムの最終到達点であり、モダニズ…

佐藤友哉『フリッカー式』

●佐藤友哉の『フリッカー式』を読んだ。出だしから、全体の約2/3くらいまでは全く面白くなかった。たんに幼稚で稚拙で青臭いというだけでなく、かなりはっきりと不快で、こんな本を読み始めてしまったことを後悔しつつ読みすすんだ。『エナメルを塗った魂の…

佐藤友哉『エナメルを塗った魂の比重』(2)

02/12/21(土) ●昨日、佐藤友哉の『エナメルを塗った魂の比重』を読んでいて、この感じは何かに似ているなあ、と思い、デビッド・リンチだとか『侯爵夫人邸午後のパーティー』の阿部和重だとかを思い浮かべ、ちょっと違うかと思い直し、そして、あっと思った…

佐藤友哉『エナメルを塗った魂の比重』

●「よりぬき偽日記」(http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/yorinuki-i.html)に、『CAN YOU KEEP A SECRET ?(映画・読書・その他、19)』と『ON THE CORNER(映画・読書・その他、20)』を追加しました。今年の2月中頃から5月中頃くらいの日記を編集したも…

●移転しました。なんだかんだ、作業に丸一日かかってしまった。思っていたよりも面倒くさい作業があり(ファイル名で使えない文字が増えて、ひとつひとつ書き直したりとか)、さらに、コンピューターとかウェブとかって、詳しくない者にとってはやはり相当得体…

●大気中に散らばった水の粒子に、低い位置からの太陽の光が横様に射して反射し、全体がぼうっと薄白く輝いているような空に、まるでナメクジのような形の丈の短いひこうき雲が、ゆっくりとした速度で動いて行く。マンションの建設現場の空高くまでのびるクレ…

イーストウッド『ブラッドワーク』

●イーストウッドの『ブラッドワーク』を観ていたら(12/08)、無性にショーン・ペンの監督デビュー作『インディアン・ランナー』が観たくなった。ちょっと間があいてしまったけど、今日ビデオで観た。これはもう、冒頭の雪のハイウェイでのカーチェイス(という…

「傾く小屋」展のカタログの塩田純一の文章によると

●「傾く小屋」展のカタログの塩田純一の文章によると、東京都現代美術館はこの3年間、作品を購入するための予算が全くの「0」であるそうだ。しかし、「傾く小屋」と同時にやっていた常設展示は、思いの外充実していた。 ●例えば、美術館が出来たときその購入…

●昨日、朝方までマンガを読んでいて、あまり眠らないまま多摩美のシンポジウムに出かけ、その会場が寒かったこともあって、何となく風邪ぎみで頭痛がするのだが、「傾く小屋」が最終日なので、東京都現代美術館まで行った。ここで展示されている様々なスタン…

「芸術学のメソドロジー」(岡崎乾二郎、石岡良治、上崎千、松井勝正)

●多摩美術大学で行われた「芸術学のメソドロジー」というシンポジウム(岡崎乾二郎、石岡良治、上崎千、松井勝正)を見に行った。このシンポジウムの基調をなすテーマとして、視覚的な芸術作品と、それを言語によって分析・記述することの関係みたいなことがあ…

松浦寿輝『鰈』

●朝方は冷え込み、きーんとした空気が張りつめる。朝露がシャーベット状に凍ったものが、すっかり黄土色に変色した芝の一本一本をコートしていて、中庭の芝生を踏みしめながら斜めに横切る時、一歩踏み出すごとに靴の裏からシャリシャリした感覚が伝わってく…

松浦寿輝『鰈』

02/12/12(木) ●「群像」1月号、松浦寿輝『鰈』を読む。いつもながらの松浦寿輝の反復。今回は、熟れ過ぎて腐った『銀河鉄道の夜』のパロディのような趣もある。この小説からは何も「新しさ」や「驚き」などは得られないだろう。ただ、その紡ぎ出され連なって…

●一日、根を詰めて制作していたので、目が疲れてものを観る力がない。モニターの上の文字の形をはっきりと掴もうと、目を凝らしてみても、目が観ることを拒否する感じで、文字を追うだけでもきつい。夕方、買い物に行ったついでに駅前の本屋で、「群像」(松…

●木々の上に積もった雪が徐々に溶けて、水滴になって落下し、落ち葉に覆われた地面や、まだ木に残っている葉などを叩く音が、四方八方から立ち上がって混ざり、中心も方向ももたない水音の広がりが空間を充たしている。すべてを覆い尽くすという程に残ってい…

J・L・ゴダール『恋人のいる時間』

●昨日観た、J・L・ゴダール『恋人のいる時間』について、ちょっと。大ざっぱに言えば、初期のゴダールの映画はみなカップルについてのものばかりだ。さらに大ざっぱに言えば、カップルとは言っても男の方はただ悩んでいるばかりで、重要なのは常に女の方なの…

クリント・イーストウッド『ブラッドワーク』

●渋谷東急2で、クリント・イーストウッド『ブラッドワーク』、シネセゾン渋谷で、J・L・ゴダール『恋人のいる時間』。しとしとと降る冷たい小雨がしぶとくて、なかなかやまないと思っていたら、レイトショーが終わって電車が家の近くの駅につく夜中過ぎには…

イメージ、描写、空間

●絵画を、イメージ、描写、空間という、それぞれ異なる要素が独立したまま絡み合っているものとして、とりあえずは見ることが出来るかもしれない。イメージとは、例えば顔が描かれているとしたら、それが「顔」だと分かり、その顔がイエスのものだったり、聖…

●昨日、緑地からごそっと拾ってきた落ち葉、【様々な色(赤、赤茶色、焦げ茶色、赤錆び色、黄色、黄土色、黄金色、黄緑色、うぐいす色、緑、緑がかったグレー、暖色系のクリーム色、濃い青紫....)、様々な形態(丸かったり、細長かったり、ギザギザだったり、…

●低い位置から斜めに射してくる冬の朝の光が、ちょうど進行方向の正面から射して直接目に入るので、自転車のペダルを漕ぎながらも、前タイヤのすぐ先の地面に近いところくらいしか見ることが出来ず、目を細め手を額にかざして光を避けてもっと先の方に視線を…

●ここ最近、「こんな絵を描いちゃっていいんだろうか」というような作品を結構夢中になって何枚か続けてつくっている。「こんな絵」というのは、あまりにマニアックというか、あまりに趣味的、アマチュア(=愛好家)的という意味。「筆」を使いはじめたら(11/2…

青山真治『私立探偵濱マイク/名前のない森』71分のバージョン

●青山真治の『私立探偵濱マイク/名前のない森』の71分のバージョンをDVDで観た。 物語の骨格は43分のテレビバージョンと、ちょっと拍子抜けするくらい変わってなかった。しかし勿論、長さが違う。43分と71分では28分も違うのだからそれだけで相当なものだ。…

●午後になると急に冷え込んで、晴れていた空もきたなく濁った雲に覆われる。空が雲で塞がれると、光源のはっきりしないうっすらとした光が蔓延し、光は薄まって、影になった部分の暗さは増すのに、建物や木々などはかえってぼうっとした光によって包まれて浮…