2025-01-01から1ヶ月間の記事一覧
⚫︎『屍人荘の殺人』(今村昌弘)を読んだ(1月28日の日記を参照されたい)。 うーん。面白くないことはないのだが、謎解きの部分を読むと、やや引いてしまうというか、空虚な気持ちになる。設定も面白いし(『がっこうぐらし』みたいだ)、一つ一つ事件が起きてい…
⚫︎作品における受け手の「自由」とは、解釈の自由、多義性などではなく、経験の個別性・特異性(「このわたし」にとっての「これ」であり、「これ」でしかない経験)としてある。経験の個別性に対しては、作者の意図や作品の組成の側が優位に立つことはないし…
⚫︎VECTIONの会議で話題になった記事。 《ハサビスさんがAIの欺瞞について語っていたのを聞いて、もう少し具体的に知りたくなって探してみたら、2024年12月にAIの安全性を研究する非営利団体Apollo Researchが発表した「Frontier Models are Capable of In-co…
⚫︎以下で「言いたいこと」の内容はまったく大したことではないが、それを言うためにはいくつかの段階を踏む必要がある。これらは、物語として継起的に連なっているのではなく、同一時空において、複合されることで「ある環境」を作っている複数の要素である…
⚫︎待望の、マルドロールちゃんのうたの最新動画がきた。今回は、過去に書かれたテキストの紹介だが、今、こんなに際立って「知性」を感じさせる語りが他にあるだろうか、と思う。知性、自虐、アイロニー、ユーモア、毒…、そして繊細で緻密。知的である(知と…
⚫︎「ガンダム ジークアクス」、地元のシネコンでも観られるんだな。 というか、アニメからけっこう関心が離れてしまっているので、庵野秀明(スタジオ・カラー)がガンダムをやるということを、そもそも知らなかった。監督が鶴巻和哉で、シリーズ構成が榎戸洋…
⚫︎夢。おそらく東京の、よく知らない土地。夜。アロハを着た南国風の中年の男性に案内されている(この、案内する男性は、途中で少年になって、また中年に戻る)。夢の中の「私」も中年男性。大きなビル。中央部分は、三階くらいの高さまで吹き抜けになってい…
⚫︎パウル・クレーは、近代芸術が囚われていた洗練化という方向性に従わない。彼の作品が常にどこか「素人っぽい」のは、近代芸術的な洗練によって抑圧された、洗練にとっては余計なもの(過剰なもの)を抑圧しないで、それが現れるまま放置しているからだろう…
⚫︎『夢みる部屋』(デイヴィッド・リンチ&クリスティン・マッケナ)より引用。『ツイン・ピークス』について。まず、クリスティン・マッケナによって書かれた部分。次に、リンチによって語られたところ。《パイロットと赤い部屋とその先だな―-それをあわせると…
⚫︎『夢みる部屋』(デイヴィッド・リンチ&クリスティン・マッケナ)、「アメリカの田舎暮らし」の章より(かなり長めの)引用。この本は、クリスティン・マッケナによる「伝記」部分と、リンチによる「自伝」部分で構成されている。以下、引用するのはリンチのパ…
⚫︎下の写真の三人は、カイル・マクラクラン、ラファエラ・デ・ラウレンティス、リンチ。1983年頃だという。おそらく、リンチとマクラクランが初めて会った時のものではないかと思う。若い頃のリンチはカイル・マクラクランになんとなく雰囲気が似ていると思…
⚫︎東京科学大学(旧・東京工業大学)の磯﨑さんの授業でゲストとして話した。『心が叫びたがってるんだ。』をメインに、秩父三部作について。 以下は、スライドの一部。
⚫︎リンチの『マルホランド・ドライブ』をU-NEXTで。最近、長い映画を観るのは体力的にきついというか、いや、実際に観初めてしまえば全然大丈夫なのだが、観ようと決意するまでの心理的なハードルが高くなってしまっているから、途中で集中力が緩んだ感じに…
⚫︎随分前に観て以来のリンチの『ロスト・ハイウェイ』をAmazonプライムで。1997年の映画。「世界へと滲み出す脳」を書いた時にはこの映画を男性視点から考えていたけど、女性視点としてみてみると、かなりシンプルに女性が男性の暴力に復讐する話だと考えら…
⚫︎起きてすぐ、半ば寝ぼけた状態で、スマホのニュースでリンチが亡くなったことを知った。Netflixの企画が流れたという話を聞いた時は、残念だと思うと同時に、まだ新作を作る気はあるのだな、と、少し嬉しく思った。七十歳代のはずだから、あと十年くらいは…
⚫︎東工大(もう「東工大」ではないのか ? )で20日にする講義のために、改めて『心が叫びたがってるんだ。』と『空の青さを知る人よ』を観直した。特に「心が…」は、一部の隙もなく完璧にロジカルに構築された作品だと思う。それがすごいところであり、同時に…
⚫︎「陽の当たる大通り」は、ピチカート・ファイブの中で最も好きな曲の一つ。『overdose』からもう30年経つのか、と思う。そう考えると、自分に残された時間など、あとほんの一瞬しかないのだなあとも思う。 ・野宮真貴 - 陽の当たる大通り (feat. Phum Viph…
⚫︎酔っ払ってしまわないくらい、頭の緊張をふわっと緩める程度のアルコールを飲んで、YouTubeを適当に彷徨いながら聴いた、ある夜のプレイリスト。 (こんな贅沢なことは、一昔前だったら、大量のレコードやCDを所有しているかなりの音楽マニアでなければでき…
⚫︎あくまでYouTubeで、なので、そんなに声を大にして言えないのだが、最近やたらとビートルズを聴いている。去年の12月22日の日記で書いたように、カヴァーを通じてビートルズに近付いたということもあるのだが、それと同時に、最近、改めてミックスし直され…
⚫︎地下アイドルを全然追いかけなくなった。でんぱ組もRYUTistもなくなった。でも、去年は広瀬愛菜と寿々木ここねの新作が出たのがとても良かった。 ・広瀬愛菜 「21」 https://www.youtube.com/watch?v=InMfmQEcno4&list=OLAK5uy_mO-KyX3a3QSG3UhezuFncyeVL4…
⚫︎RYOZAN PARK 巣鴨で「保坂和志 小説的思考塾 vol.19」。今回のテーマは「神話・物語・歴史」。つまり、そういうものの力に取り込まれない思考や行為について。以下は、保坂さんの話の正確な要約ではなく、ぼくが聞きながら考えたこと。 ⚫︎「神話」という語…
(前からつづく、戯曲『想像の犠牲』について) ⚫︎以下に引用するのは、土井によって書かれた記録としての戯曲で、かつて行われた上演では西川(西川役の人)によって語られたとされる、演出家が〈弟〉に語ったという「いつか書き上げる小説」の登場人物が見た夢…
(前からつづく) ⚫︎『シュタインズゲート』が、世界が無数の並行世界へと分離・増殖していく話であるとすれば、『ゴジラSP』は、時間の巡行と逆行を無限に繰り返すことで、一つの世界、一本の時間軸の中に、やり取りされる情報が何層も折り畳まれるという話だ…
(一昨日からつづく) ⚫︎『想像の犠牲』では、誰かが誰かに「役」を付与し/誰かが誰かによって「役」を付与される、という出来事が相互的に連鎖する。それは、戯曲と上演との関係において、過去にも未来にも向けた、さまざまな人によって反復され得る出来事の…
(昨日から続く) ⚫︎戯曲『想像の犠牲』には二つのプレ・テキストがあると言える。一つは、フィクションのレベルにのみ存在する、「演出家」によって書かれた戯曲である「想像の犠牲」で、この戯曲は実際には『想像の犠牲』の中でそのごく一部が再現されるだけ…
⚫︎戯曲『想像の犠牲』について。一読してまず思い浮かべたのは、『ゴジラ・シンギュラポイント』と『シュタインズゲート』。そして大江健三郎。さらに高橋洋の、特に映画美学校の学生たちと共作している一連の意図的にチープに作られた映画群。 特に、高橋洋…
⚫︎戯曲『想像の犠牲』を、ようやく読み始められた(半分くらい読んだ)。ひとまず、読み進めるための整理。 ⚫︎設定として、まず、アメリカにいる「演出家」と呼ばれる人物によって書かれた戯曲(「想像の犠牲」)があり、それは(演出家の)〈弟〉経由で土井に届け…
⚫︎『ヤンヤン 夏の想い出』(エドワード・ヤン)DVDで。この日記を検索してみると、前に観たのはエドワード・ヤンが亡くなったことを知った2007年の7月だった。 え、こんな映画だったっけ。こんなベタな映画だった ? 、というのが最初の感想。結果としてこの作…
⚫︎正月の親戚の集まりのときに、叔母さんや従姉妹から、小説を読んだけど難しかったと言われた。『セザンヌの犬』は、時空構造や因果構造をかなり複雑に作り込んでいるとはいえ、書かれていることそのものは、自分の思ったこと感じたことをストレートに書い…
⚫︎この木は、少なくとも50年前から、この場所に、ほぼこのままの姿で立っている。4、5歳から10歳くらいまで、河原のこのあたりはぼくにとって世界の中心のような場所だった。といっても、小学校高学年にもなれば見向きもしなくなって、その後はずっと忘れた…