2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧
●NHKの「名盤ドキュメント」の「風街ろまん」(はっぴいえんど)の回がネットにあがっていた(おそらく違法アップロードだろうからリンクは貼らないが)。名盤と言われるレコードの原盤のマルチトラックテープを聴きながら、メンバーがレコーディング時のエピソ…
●外に出るときはいつもマスクをつけるようになって一年以上経つのに、時々マスクを忘れることがまだある。外に出て、100メートルくらい行ったところで、他人の視線によってマスクを忘れたことに気づいて、走って取りに戻った。
●「二人組み」(鴻池留衣)を再読。これはこれでとても良い小説だが、改めて振り返ると、ここから二作目(「ナイス・エイジ」)、三作目(「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー)へと飛躍する跳躍力のすごさを感じる。それだけのものがここには潜在されていたというこ…
●(昨日からつづく)『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』(鴻池留衣)では、「最後の自粛」と同様に陰謀論的な世界が展開される。陰謀論には出来事のスケール感や距離感の失調があり、ごく身近で起るちいさな出来事が、そのまま世界を動かす大きな組織の陰謀(の…
●『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』(鴻池留衣)を読んだ。 これはすごい。前半だけを読むと、とても複雑ではあるが、理解可能な知的操作によって組み上げられたコンセプチュアルな小説に見えるが、中盤のある地点で底が抜けて、それ以降は、とりとめもなく…
●「スーパーラヴドゥーイット」(鴻池留衣)を読んだ。「すばる」の二月号に鴻池留衣の新作が載っていると知った時には、既に「すばる」二月号はamazonでも品切れだったので、図書館で借りてきて読んだ。 はじまりから終わりまで緩むところがなく、常に、新鮮…
●去年は、数として、生涯で最も多くの小説を読んだ一年だった(「新人小説月評」のほかにも、多量の小説を読む必要があり、それが重なったため)。それは逆に、「それ(必要)以外の小説」がほとんど読めなかった、ということでもある。なので、ちょっとした浦島…
●「ナイス・エイジ」(鴻池留衣)を読んだ。 去年、一年間「新人小説月評」をやっていて、もっとも興味をひかれた作家が鴻池留衣だった。「最後の自粛」(新潮)は上半期の五作に入り、「わがままロマンサー」(文學界)は下半期の五作に入った。「わがままロマン…
●図書館に、予約しておいた本を取りに行った後、回り道をして川沿いの桜並木を見に行った。しかし、まだあまり咲いてはいなかった。そのまま川沿いの道を上流の方向へ歩いて帰るのだが、しばらく行くと、油圧ショベルが川に入って河川の工事が行われていた。…
●2002年の2月か3月のこと。深夜のトーク番組(ホストは薬丸裕英)にゲストとして安野モヨコが出ていた。安野モヨコは、「今までつき合ってきた男はみんな普通の男ばかりだった。普通の男とは、夏は海、冬はスキー、趣味は車、みたいな男のこと(こういう男が「…
●昨日からのつづき。引用、メモ。『現実界に向かって ジャック=アラン・ミレール入門』(ニコラ・ルフリー 松本卓也・訳)、第二章「精神分析的臨床」より。 (精神分析はどうしても「神経症者」に関する探求が主となるのだが、ここで書かれている「精神病者」…
●引用、メモ。『現実界に向かって ジャック=アラン・ミレール入門』(ニコラ・ルフリー 松本卓也・訳)、第二章「精神分析的臨床」より。 ●治療ではなく経験、普遍ではなく特異性。 《まず、ミレールは「治療cure」という用語を「経験experience」という用語に…
●社会的な出来事にまったく無関心でいることはできないので(どうしても気持ちが引っ張られてしまうので)、その点から、『全体主義の起源』(ハンナ・アーレント)と『愛と幻想のファシズム』(村上龍)が気になっているのだが、どちらもごつくて分厚いので、なか…
●(一昨日の日記のつづき)下の動画で菊地成孔は、二つのタイムラインが同時に進行するアフリカ的なポリリズムのレクチャーを行っている。一つの小節を十二に分割するパルスがあるとして、それを、キクチ、キクチ、キクチ、キクチという刻み方で四拍として感じ…
●U-NEXTのラインナップに入っていたので、おそらく十数年ぶりくらい(いや、もっとかもしれない)で『雪の断章 情熱』(相米慎二)を観た。生涯に長編映画を13本つくった相米慎二のちょうど真ん中、7本目の監督作品(1985年)。ここらへんまでがイケイケの超売れっ…
●ウォルトンの「フィクション=ごっこ遊び」論が面白いのは、これを元に(ウォルトン自身の議論の展開から離れて)考えていくと、フィクションの作り手と受け手とを区別する必要がなくなるのではないかと思われるから。 作り手と受け手との違いは、ごっこ遊び…
●『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(大林宣彦)をU-NEXTで観た。最初の一時間くらいは、緩いし、ほんとにぐちゃぐちゃだなあと感じていたが、中盤に入ると急速に、反復強迫的な強度が高まって、逆に息苦しいくらいに求心的な感じすらしてくる。 この作品では、…
●引用、メモ。『現実界に向かって ジャック=アラン・ミレール入門』(ニコラ・フルリー 松本卓也・訳)、第一章「哲学から精神分析へ」より ●ラカンの論理学化。 《精神分析にとって、真理は象徴と事実のあいだの一致とは関係がなく、真理は単に分節化の効果で…
●メモ。菊地成孔のリズム講義。つづけて聴くと面白い。話は、上から下へと順番につづいているが、まず「アフリカンポリリズムのフラクタル構造」を最初に聴くと分かりやすいかも。 「リズムの微分と積分」 https://www.youtube.com/watch?v=XaJddz4STGE 【菊…
●「夜明けまでの夜」(保坂和志)では、一方に、若い友人から即時的にメールで送られてきていた二匹の子猫の一夜もたなかった命の成り行きがあり、もう一方に、アウグスティヌスとエックハルトの言葉がある。これはどちらも言葉として作者(話者ではなく作者と…
●保坂さんの小説を読んで、長いこと思い出すこともなかった受験生最後の頃を思い出して、昨日と一昨日の日記に書いた。もう少し。 1989年の3月には、一次試験で三回、一次の発表で一回、二次試験で二回、合格発表で一回と、一ヶ月のうちに計七回も芸大に行っ…
●昨日の日記を書いていて思い出した場面。89年の芸大の一次試験の三日目(一次試験の最終日)が終わった後、二次試験対策のための油絵を終電近い時間まで描くために、そのまま横浜にある予備校まで戻る。待ち合わせたのか、たまたま駅で会ったのか、同じ予備校…
●『猫がこなくなった』(保坂和志)に収録されている「ある講演原稿」と「秋刀魚の味と猫算」を読んでいると、自分の昔のことがいろいろ思い出されて、ぜんぜん先にすすめなくなる。「ある講演原稿」では子供の頃のことを、「秋刀魚の味と猫算」では受験生の時…
●U-NEXTで『日本春歌考』(大島渚)を観ていた。自分が生まれた年につくられた映画。大島渚は松竹ヌーヴェルヴァーグと言われているが、映画作家(作品のスタイル)としてはヌーヴェルバーグの次の世代、アンゲロプロスやベルトルッチなどに近いと思う。大島渚、…
●メモ。面白い。津田道子っぽいけど。米津玄師『感電』のMVを撮った奥山由之がつくった(『感電』のMVも良かった)。 Mame Kurogouchi 2021 Fall Winter Collection https://www.youtube.com/watch?v=Gs7EulPQHeU 津田道子「あなたは、翌日私に会いにそこに戻…
●人のこころの年齢は見た目よりもずいぶん若い。たとえば、夢のなかで年齢よりも若い自分として生きている状態をしばしば経験する。しかし、夢による時間遡行には限界があるのではないかと最近気づいた。ぼくの場合、自分が高校生くらいの感じで存在している…
●昨日書いたことが、まだちょっとひっかかっている。『スパイの妻』には蒼井優が登場しない場面もある。だから、厳密には蒼井優を視点人物だとすることはできないだろう。しかし、この映画の中心にいるのが蒼井優であることは間違いないだろうと思う。 この…
●『スパイの妻』(黒沢清)の「語り」について少し思ったこと(以下、ネタバレしています)。 蒼井優が金庫から書類を盗み出す場面を観る時、彼女の行動の動機は高橋一生との平和な生活の維持(あるいは自己保身)であると観客は思い、故に書類はただ破棄されるか…
●『スパイの妻』(黒沢清)をU-NEXTで観た。一度目はかなり興奮しながら観たし、もう一度繰り返して観て、なるほど、こういうつくりになっているのかといろいろ納得するものがあった。 だけど、改めて何か書こうと思うと、書きたいことが出てこない。黒沢清の…
●「考えるな、感じろ」、「感じるな、考えろ」、「考えなければ、感じられない」、「感じなければ、考えられない」という4つの文は、排他的ではなくどれも真であり、必須であり、どれが欠けてもいけない。さらにここに「知る」を含める。「知るな、感じろ」…