●「スーパーラヴドゥーイット」(鴻池留衣)を読んだ。「すばる」の二月号に鴻池留衣の新作が載っていると知った時には、既に「すばる」二月号はamazonでも品切れだったので、図書館で借りてきて読んだ。
はじまりから終わりまで緩むところがなく、常に、新鮮さと密度と緊密に組み立てられた構築姓が感じられ、たいへん読み応えがあった。ただ、「最後の自粛」や「わがままロマンサー」と比べるとやや抑え気味でおとなしいというか、「こんなことある?」とか「えーっ」とかいう声が思わず漏れてしまうような決定的な驚きは最後まで訪れなかった。いや、充分に面白いのだが、「わがままロマンサー」のようなすごい小説の次の作品ということで、どうしても期待のハードルが高くなっているので。
それと、この手のメタフィクション的な構造には過去にとても多くの先例があり、読者としてはかなりの耐性がついているので、よほどのすごいことが起らないとなかなか驚けなくなってしまっている、ということはある。逆に考えれば、既に手垢のついたメタフィクション的な構造を用いて、よくぞここまで読ませるものが書けたものだという、その細部や展開の充実に驚くべきなのかもしれない。読み始めた時に、「え、メタフィクションなの…、大丈夫なの…」と危惧したのだが、さすがに鴻池留衣だけあって、最後までちゃんと面白かったので、よかった。
(ただ、鴻池留衣なので、メタフィクションだと思って読んでいたら実は…、という、とんでもない飛躍---あるいは隠された悪意---があるのではないかと期待してしまったのだ。)
(そうか。他の作品と比べると「曲者度がやや薄め」と感じた、ということなのだと思う。)