●人のこころの年齢は見た目よりもずいぶん若い。たとえば、夢のなかで年齢よりも若い自分として生きている状態をしばしば経験する。しかし、夢による時間遡行には限界があるのではないかと最近気づいた。ぼくの場合、自分が高校生くらいの感じで存在している夢を見ることはけっこうあるが、ここのところ長らく、中学生である夢にはほとんど覚えがない。夢による時間遡行において、十代の半ばくらいに大きな壁があるようなのだ。
そしてこれは、記憶がないということとは違うようだ。個別的な場面の記憶としては、高校生くらいの頃の記憶よりも、中学生、小学生の時期の記憶の方が、より強く、生々しく残っているものが多い。しかし、「その当時の自分として、今、みている夢を経験する」、「夢として、当時の自分の感じが再構成される」ということは難しいようだ。
記憶として生々しく思い出すことと、夢のなかで当時を自分の感じが再現されるということは、異なるようだ。前者は、現在の自分の内に過去の状態が生じるということで、後者は、自分の有り様自体が構成し直されることだから、ということなのだろうか。