●大気中に散らばった水の粒子に、低い位置からの太陽の光が横様に射して反射し、全体がぼうっと薄白く輝いているような空に、まるでナメクジのような形の丈の短いひこうき雲が、ゆっくりとした速度で動いて行く。マンションの建設現場の空高くまでのびるクレーンが、軋みながら稼働している。野球場の外側をぐるっと囲んでいる遊歩道には、まだ昼前なのに夕方のような影が落ちている。黄緑色と黄土色とが胡麻塩のように混じって拡がる外野の芝生の、日の当たらない一画に、大きな瘤のような溶け残った雪の塊が、汚れて青ざめた色をして鎮座している。