●夜、駅前のスーパーへの買い物の帰り、空を見上げて、ああ、月が出てるなあと思った時、そういえば、夜になってから部屋へ戻る時にはほとんどいつもこの場所で、このタイミングで空を見上げてるんじゃないかと気付いた。
駅からアパートまではずっと緩い上り坂で、蛇行する道から私道のような細い脇道に入り、その脇道の勾配がぐっと急になったすぐ先で不自然に道幅が広がるので、自然に正面の空が視界に入り、それにつられて視線が上に向くのだった。しかし、ここで空に目が行くのはなぜか決まって夜で、脇道を抜けた後もそこからアパートまでのしばらくの間は顔が上を向いていて、今日は星がいっぱい見えてるなあとか、曇って空がぼうっと明るいなあとか思いながら歩くのだった。
●テレビをつけたらハキリアリというアリを紹介していて、そのアリはなんと、切り取った葉を巣のなかに集め、それを用いてキノコを栽培して餌にしているという。ナレーションはさらっとした調子で、「このアリはなんと農耕を行っているのです」みたいに流していたけど、これって、「人間」という概念を揺るがしかねないくらいすごいことなんじゃないのか、と思い、そこ、もっと詳しく突っ込んでよ、と思った。
(ミツバチみたいに、自分自身の身体とか分泌液とかを用いて食物を加工する昆虫ならありふれている気がするけど、(生育環境のなかにある物たちを組み合わせて「別の環境」をつくって)純粋に「作物を育てる」昆虫って、他にもいるのだろうか。だいたい、その農耕はどうやって伝達-教育されているのか。生得的な農耕などありえるのか。)