●昼頃に家を出た時には曇っていたのに、銀行、文房具屋、スーパーなど、近所でいくつか用事を済ませてまわるうちに、かかっていた雲が徐々に散っていって、だんだんと日が強く射してきて、暑いほどになり、羽織った上着の内側で軽く汗が滲み出てくる。
●しかし、からっとした秋晴れの太陽は、午後3時くらいになるともうかなり傾いていて、空は相変わらず澄んだ明るい青のままなのだけど、建物の壁などに直接当たって跳ね返る光は、赤みを帯びはじめた夕方の気配で、視線をやや上にあげて、空と家々の壁の両方が同時に視界に入るようにすると、ちぐはぐで妙な感じがする。
●電車に乗って少しうとうとと眠って目覚めたら、いつの間にか色が失われてしまったかのような寒々とした薄暗さに取り囲まれていて、そのあまりに唐突な光の変化に、何かから「取り残されて」しまったような、何かを「取り逃がして」しまったような感情に襲われるのだが、しかし、すっかり暗くなった空は、暗くなってもくっきりと澄んだままなのだった。