●明日の作品搬入に向けて、作品を梱包するためのエア・キャップを買いに行き、ついでにスーバーで買い物を済ませ、左の脇にエア・キャップの1.2×5mのロールを抱え、右手にスーパーのビニール袋を下げて、駅の裏の、住宅街のなかでそこだけぽっかりと畑がひろかがる辺りの、ずっと先までまっすぐ続く道をのんびり歩いていた。風が強いせいか、空は冬のように澄んでいて(空に一個だけポツンと浮かんでいる小さな雲は強風でめまぐるしく形を変え)、正午をまわったばかりの太陽はほぼ真上から射すので、ずっと先まで見えているまっすぐの道にはまったく影がおちていなくて、直接光が当たって跳ね返してギラギラ輝き、まっすぐ続く道の突き当たりは高台へと登る階段が壁のようにそそり立って視界を塞いでいる。たまたま人通りもなく、ずっと先までくっきりとよく見えている道では歩いている速度ではあまり進んでいる感じがなくて(歩いているという体感と視覚が乖離して)、強い光が風景から厚みを奪って薄っぺらに感じられ、こういう時、感覚がバラけて、世界が自分から急速に遠く離れてゆくように感じられ、自分が今見たり感じたりしているものは皆、脳によって構成されたものにすぎないという感じになり?SFなんかでありふれた、ずらっと並んだカプセルみたいな物のなかに一人一人隔離された人々が、眠っていて、それぞれがそれぞれのバラバラな夢のなかで生きている、というような(マトリックスみたいな)陳腐なイメージに、にわかにリアリティが感じられるようになる。何と言うか、時間の外にはじき出されたような感じだ。