03/11/29

冷たい雨の降る土曜日でも、解体された駐車場の工事は行われていた。地面に深い穴をあける長いドリルをつけた背の高いクレーンは、自らあけた穴に鉄柱を埋め込むためにワイヤーで鉄柱を吊り上げる。(目隠しの幌が張られているので下の方は見えないのだが、おそらく)地面に横たえた状態で置かれた鉄柱をワイヤーで引き上げるため、ワイヤーで吊られていない鉄柱の下の部分が、持ち上げられる時に地面に激しく擦れてガガガガガガガッと大きな音をたてる。大きな音をたてつつ垂直にまで持ち上げられ宙に吊られた鉄柱は、揺れないようにゆっくりとした速度でピーッ、ピーッ、ピーッという電気音とともに下がってゆき、(下の方は見えないが、おそらく)ドリルによってあけられた穴に少しづつ滑り込んでいるのだろう。ドリルのついたクレーンに比べると高さが2/3程の、こちらは物を移動させるためのものらしいクレーンがブゥゥゥーンと唸りながら緩慢に首を振っている。目隠しで囲われた一部分に設置させている巨大な鉄製のアコーディオン・カーテンのような出入り口が内側から左右に開き、透明な雨ガッパに黄色い蛍光色のラインの入ったものを着て手に誘導用の赤ランプを持った警備員が数名駆けだしてきてわらわらと配置につくと、その出入り口からいかにも重機械といったタイヤ付きのごつい鉄の塊が出てきて、地面を揺らしながら目の前を通り過ぎて行く。扉が開いたのでなかの工事の様子を覗き見ようとするのだが、手前に建築資材が積まれていて奥の様子は見えない。何の音かわからないのだけど、時折、バコン、バコン、ベコンというような乾いて籠もった音がたつ。降りつづける雨が、目隠しのために張られた幌を濡らして重たく垂れ下げる。工事現場の脇の一部だけ残された植え込みに茂る木々の水分をたっぷりと含んでうなだれた緑に輝く葉は、今日は風がないのでぴくりとも動かない。