03/11/25

電車がホームに着き、扉が開く。扉が開いた途端に入ってくるシャーッという音は、雨の降っている音なのか、それとも湿った道路に車のタイヤが滑ってゆく音が遠くから聞こえているのだろうか。雨の日の電車の籠もった空気に、外の冷たい空気が混ざる。電車の先頭の車両に乗っていたので、開いた扉の先にあるのはホームの先端で、そこには屋根がなく、雨が降り込み、人は誰も立っていない。ホームの向こうには、切り崩された山の土が露出していて、宅地用に平たく造成されている土地が拡がっている。雨をたっぷり含んだ土が赤茶けて見え、湿った土の匂いが電車のなかまで入ってくる。発車を告げる音楽がかかり、扉が閉じて、電車は再びゆっくりと動きはじめる。