●陽の当たるホームで、電車が来るまでの時間、白い紙に印字された文字を追っていた。アナウンスがあり、電車がホームに滑り込んで、ドアが開く。そこまでを、気配と音で感じてから、白い紙から目を上げる。開いたドアは、直射日光の当たる紙の白に慣れた目ではその内部が伺われない暗い穴のように見える。電車に乗ってもしばらくは、乗客がうごめく影のようにしか見えなくて、顔は暗くつぶれて識別出来ない。何か異様な別世界にいきなり紛れ込んだみたいな感じだった。