2022/09/09

●U-NEXTで『MEMORIA メモリア』(アピチャッポン・ウィーラセタクン)が観られる。

アピチャッポンは、映画というものの全く新しいステージというか、二十世紀的映画とは全く異なる何かを出現させていると思う。この映画の長い長いワンカットは、「長廻し」ではなく「ワンシーンワンカット」でもない、もっと別の概念だろう。例えば、タルコフスキーの映画的に構築された長いカットとは全く異なると言っていいと思う。

変な言い方だが、この映画では、レイヤーの成立していない多重入子状態というか、のっぺりと拡がる同一平面的な世界の中で、レイヤーも境界も曖昧なまま、互いに互いを包摂し合っているという、なんとも不思議な状態が成り立っている。ただ、難しいのは、それが「アジア的な優しい相互包摂(でも、それって実は無茶苦茶ヤバい相互依存と相互束縛の地獄の連鎖じゃね…)」みたいなものと、はっきりと異なると言えるのかどうかは自明ではないという点だろう。僕の直観ははっきり「違う」と言っているが、それを本当に信じていいのか。

このことについて突っ込んで考えるためにも、長らく放置したままだった「幽体離脱の芸術論」の続きを本気で考える必要があるのかなあと、観ながら思った。そこでは、アピチャッポン、岡田利規高橋洋の作品などについて考えることになるのかなあ、と(考えるための刺激や助けとなってくれるような優れた作品が揃ってきたかなあ、と)

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