7/14(金)

何日か前に、ようやく今年初めての焦点の定まらない力弱い鳴き声を聞いたばかりだというのに、蝉は、もうそれが聞こえてくるのが当然だとでもいうような調子でずうずうしくジージーと鳴き散らしている。

今にも雨が落ちてきそうな夜9時過ぎ。並木道の真ん中を自転車で走っていると、後ろから背中や首筋を撫でてくるように生あたたかくて湿った風が吹いてきて、左右両側から伸びてアーチ状になって頭上を覆っている枝や茂った葉がわさわさと揺れて、葉と葉が擦れ合うシャーッという音が後ろからやってきて、自転車を追い抜き、前方へ向かって移動してゆく。街灯によって出来た枝や葉の影が地面に黒々とした塊のように気味わるく落ちていて、その影もうねうねと蠢くように揺れている。地面からたちのぼってくる熱気。地面の下から響いているように虫のジージーいう声。大粒の水滴がぽつりぽつりと落ちてきて、やべえ、降ってきそうだなあ、と思い、強くペダルを踏んで家へと急ぐのだけど、その雨はすぐにあがってしまって、相変わらずの蒸し暑さがつづいた。