ある日

1階のロビーは、内側(中庭側)に向いた一面がガラス張りになっている。常緑樹の濃い緑の葉の一枚一枚が、上から降ってくる光を眩しく反射して、キラキラしながら風に揺られている。タイル敷きの地面も、強い光で露出オーヴァーみたいに真っ白くて、そこに木の影が黒々と落ちている。中庭の中心には小さな池と金属のオブジェがあって、木はそのまわりに6本ばかり立っている。視線は正面に建っている3階建ての建物に遮られているけど、目の位置をやや下げると、水色の空が辛うじて細長い帯のような形で見える。それらの風景は、縦横にはしる窓枠によって格子状に仕切られている。建物の内側が薄暗いので、外の光が一層明るく、眩しく感じられる。自動ドアのセンサーがいかれているらしくて、誰も人がいないのに時々ドアがウイーンと開く。開いたドアからは、思いのほか冷たい風がドッと吹き込んでくる。