2020-04-17

●「新人小説月評」の今月分の対象作は十作あるのだが、つまらないと感じた小説が一作もなかった。これははじめてのことだ。だがこれは、質の高い良作が粒ぞろいという意味ではない。成功しているにしろ、イマイチ上手くいっていないようにみえるにせよ、それぞれの作品が、それぞれ固有のやり方で、それぞれのあり様を追求することで、自らを示しているように読めた、ということだ。文芸誌は、こういう作品群が掲載されている場という意味でとても貴重なものだと改めて思った。

(それにしても、文芸誌は今後もちゃんと出続けることができるのだろうか。)

(読むのはいつも大変なのだが、各々が固有で多様なあり様をしているので今月は特に大変だったし、読み切れて---掴み切れて---いないという感じも強く残る。これら多様な作品群に対する反応を2200字にまとめるという無理ゲーを行わなければいけない…。)

●ネットでは、普段なかなか観られないレアな作品がいろいろと期間限定で配信されているのだが、それらを観ている余裕がないことがとても残念だ。せいぜい、一本30分弱のアニメくらいしか観る余裕がない(時間的にも、精神的にも)。

なんとか余裕をつくって観たいと思うし、読みたい本もあるのだが、酒を呑みながらぼんやり音楽を聴いているとか、何も考えずにゆっくり湯船につかっているとか、そういう時間を(けっこう長めに)つくらないと精神的に詰んでしまう。

2020-04-16

●『映像研には手を出すな!』は、放送では三話から観はじめたので、一話と二話(そして録画し損ねた九話)は観逃している。U-NEXTで配信がはじまったので、とりあえず一話を観た。いい一話だった。これを観たら多くの人がつづきを楽しみにするだろう。

ここでも、アニメの開幕の黄金パターンである「悪漢に追われるお姫様を少年(少年じゃないけど)が助ける」が踏襲されている。それも、不自然なくらい高低差が強調された場所で、お約束通りのドタバタするアクションが展開される。水崎氏(お姫様)は、まずアニメの上映会場に現れ、少年じゃない少年(浅草氏)と一瞬すれ違って、追手から逃れるためにその場を後にする。そして次の場面では水崎氏が舞台の上で追手に追い込まれている。つまり、追手によってアニメーターの場から俳優の場へ誘導され、俳優の場に留まることを強いられている。そこに浅草氏と金森氏があらわれて、水崎氏を「強いられた俳優の場」から救い出す。ここで皮肉なのは、俳優の場であるはずの舞台上が、高低差や様々な仕掛けによって、アニメ的なアクションを展開するのにうってつけの場になっているということだ。ここで浅草氏は(そのキャラに似合わず)まるでコナンみたいに水崎氏を肩に担ぎ上げて走り出す。

だが、このボーイ・ミーツ・ガール(ボーイじゃないけど)の成立には、第三者としての金森氏の存在が不可欠だ。もし金森氏によって背中を押されなかったら、水崎氏と浅草氏とは、すれ違っただけで「出会う」というところにまで発展しなかっただろう。コナンとは異なって内向的な浅草氏は、自分一人の力ではお姫様と出会うことができない。つまりこのボーイ・ミーツ・ガールは純粋なものではなく、第三者の思惑(打算)によって媒介されることではじめて成立する。金森氏は、浅草氏と水崎氏との間に共通する何かをめざとく感じ取り、そして、この二人が仲良くなることで得られる自分の利得を計算して、二人の関係が成立するように画策する媒介者である。無媒介の二人の出会いではなく、媒介者を含んだ(利害の対立する三角関係ではなく)三項関係としてはじめて成立するボーイ・ミーツ・ガール。このような設定が、この物語の新鮮さだろう。

●アニメには、背景(世界)とそこに置かれる(キャラクターも含めた)オブジェクトという、最低でも二つの層が必要だろう。浅草氏と水崎氏との出会いは、(共感関係やライバル関係というより)二つの異なるレイヤーの重なり相乗効果としてある。二つのレイヤー(浅草氏のスケッチブックと水崎氏のスケッチブック)が重なることではじめて、第三の次元が生まれる。勿論、この二つのレイヤーが重なるためには、金森氏の(打算からくる)強引な媒介が必要だ。

アニメ内アニメとしてあらわれる飛行シーンは、二つのレイヤーが重なった先にはじめて見えてくる第三の次元にあるもので、浅草氏や水崎氏が単独で見ていた夢ではない。二人の出会い(重なり)によって生まれる新しい夢だ。

●アニメ内アニメとしてある飛行を伴う追いかけっこに先行するものとして、前半の、水崎氏を救い出すための追いかけっこの場面がある。つまり、飛行を伴う追いかけっこは、前半のアニメ内現実での---より重力に強く拘束された---追いかけっこの、発展的な反復であるとも言える(「飛行」によって、より拡張された「高低差」を利用したアクションが可能になるという意味で)。つまり、アニメ内アニメはまったくの絵空事ではなく、アニメ内現実において一回演じられたドタバタの再現であるとも言える。そしてそれはどちらも、先行するアニメ(コナン)の反復でもある。つまりここには、いくつもの異なる次元が組み込まれているが、それらが「典型的なアニメ的アクション」という共通する要素によって貫かれることで、互いが互いを包み合うように関係になっている。

 

2020-04-13

YouTube大貫妙子(の曲)を聴く。

夏に恋する女たち (Studio Live) / 大貫妙子

https://www.youtube.com/watch?v=x4fAWoPOttA

夏に恋する女たち 中谷美紀

https://www.youtube.com/watch?v=bDg5HrKEqXc

大貫妙子 / 色彩都市 1983年築地「音響ハウス」スタジオライブ

https://www.youtube.com/watch?v=et1Jhg0AzZ0

色彩都市 原田知世

https://www.youtube.com/watch?v=OoHWUTir_Bo

色彩都市 薬師丸ひろ子

https://www.youtube.com/watch?v=bfA2YJQdj0c

色彩都市 松任谷由実

https://www.youtube.com/watch?v=VWGcT8rsBDY

海と少年 槇原敬之矢野顕子大貫妙子

https://www.youtube.com/watch?v=XxtiD0YrJz4

矢野顕子 海と少年

https://www.youtube.com/watch?v=zOUarDyrg58

大貫妙子「横顔」

https://www.youtube.com/watch?v=5E4Jvk0o3WU

Akiko Yano - Super Folk Song - 4. 横顔

https://www.youtube.com/watch?v=BaFYA8lTIuc

Sugar Babe - いつも通り

https://www.youtube.com/watch?v=VbADGjS4e2A

いつも通り - 大貫妙子×土岐麻子

https://www.youtube.com/watch?v=qqJ_d-NoCyo

Taeko Onuki (大貫妙子) - 突然の贈りもの (Acoustic Version)

https://www.youtube.com/watch?v=CRqYSW6dg20

Mariya Takeuchi - 突然の贈りもの

https://www.youtube.com/watch?v=iVvLtaYNiMc

Taeko Onuki & Ryuichi Sakamoto - 11. 風の道 Kaze no Michi

https://www.youtube.com/watch?v=5dMVRtz2TcU

Rajie - 風の道 (1979) [Japanese Artpop]

https://www.youtube.com/watch?v=Gdf7U18EK0o

Taeko Onuki - 新しいシャツ (Atarashī shatsu) [Boucles d'oreilles]

https://www.youtube.com/watch?v=-DjGjwyoNEw

Taeko Ohnuki - 街

https://www.youtube.com/watch?v=AGGXNNJx5Ls

Taeko Ohnuki - Wander Lust

https://www.youtube.com/watch?v=wf5pGCM6Eio

2020-04-12

YouTube山田耕筰の童謡・唱歌を聴く。

三波春夫(Haruo Minami) + コーネリアス(CORNELIUS) - 赤とんぼ

https://www.youtube.com/watch?v=5fW7q_ISS6U

Taeko Onuki & Ryuichi Sakamoto - 4. 赤とんぼ Aka Tombo

https://www.youtube.com/watch?v=eZnhjdEGsuo

大貫妙子 - この道

https://www.youtube.com/watch?v=5MdcNnq0zuw

ムジカ・ピッコリーノ♪「待ちぼうけ」

https://www.youtube.com/watch?v=-bzNR1an22A

からたちの花 安田祥子 (歌詞付き) 唱歌

https://www.youtube.com/watch?v=XlG6ZTAowE8

砂山 辻輝子 歌/北原白秋 作詞/山田耕筰 作曲【レコード】

https://www.youtube.com/watch?v=xx5dUq9emjw

美空ひばり - あわて床屋

https://www.youtube.com/watch?v=iJHFmWcBjTU

あわて床屋 (LIVE)矢野顕子

https://www.youtube.com/watch?v=pOVXXZoIEUM

遊佐未森 ”ペチカ”  (北原白秋作詞、山田耕筰作曲)

https://www.youtube.com/watch?v=U0i-O9VVcIo

山田耕筰:かえろかえろと(北原白秋)Kosaku YAMADA: "Kaero-Kaero-to"

https://www.youtube.com/watch?time_continue=32&v=XM_I5OHsRSA&feature=emb_logo

Susanna Proskura, 鐘が鳴ります

https://www.youtube.com/watch?v=RdVqm7hIXRY

2020-04-11

●余計なお世話だが、大林宣彦への追悼として、その作品を何か一本観ようと思っている人がいたら(ぼくは今、それだけの時間の余裕もないのだが)、『HOUSE』でも『転校生』でも『さびしんぼう』でも『時をかける少女』でもなく、圧倒的に『花筐 HANAGATAMI』をお勧めしたい。これが---良くも悪くも---大林なのだ、とヒシヒシと感じられると思う(新作=遺作の公開は延期されてしまったが)。アマゾンのプライムビデオでなら、今、観られる。

●少し前に、遺作となった『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の、東京国際映画祭での舞台挨拶の動画を観たら(動画を観た時には大林は生きていた)、常盤貴子が、「この映画は大林宣彦が走馬灯を前倒しで見せてくれたもので、大林の本当の走馬灯もこの映画と違いがないと思う」というようなことを言っていて、リアルに、今にも亡くなってしまいかねない人を目の前にして、「走馬灯」とか不吉なことがよく言えるよなあと思ったのだったが、これが最後の作品であると監督は覚悟し、その認識(覚悟)は、この映画にかかわる全ての人に既に共有されたものだったのかもしれない。

『海辺の映画館―キネマの玉手箱』舞台挨拶 大林宣彦監督 | "Labyrinth of Cinema" Nobuhiko Obayashi (Director)

https://www.youtube.com/watch?v=WjACnz7N7Lg