2020-07-17

●『MUI404』、第四話。いい話だった。泣いた。このドラマは、たとえば『アンナチュラル』とかに比べて、題材も筋運びも、より直接的に社会派なのだなと思った。『コタキ兄弟の四苦八苦』も、けっこう社会派だったけど。

演出で面白いのは、配役のバランスで、一方に、テレビドラマ的にわかりやすい外見をして、テレビドラマ的にわかりやすい演技をする俳優たちがいて、こちらは比較的有名な俳優で、もう一方に、テレビドラマ的にわかりやすいとは言えない外見で、テレビドラマ的にわかりやすいとは言えない演技をする俳優たちがいて、こちらは比較的無名の俳優が担当している。わかりやすい外見、わかりやすい演技の代表が、生瀬勝久橋本じゅん麻生久美子で、わかりにくい(というか、割り切りにくい)外見、わかりにくい(割り切りにくい)演技を担当するのが、今回では「犯人」である美村里江だろう。つまり、わかりやすい側は主に警察で、わかりにくい側が主に犯人となる。この配合によって、テレビドラマとしてのキャッチーさと、テレビドラマ的な虚構には収まらない、現実と地続きであることを感じさせる生々しさを両立させようとしているように感じられる。

(そして、このドラマのキモは、どちらかというと、わかりにくい側の演技にあって、それによって支えられていると思う。)

で、主役の綾野剛星野源だけど、綾野剛は、あきらかにわかりやすい側の演技をしているようにみえるが、星野源は微妙な感じだ。星野源はとても有名だし、誰が見ても星野源とすぐ分かるのだから、わかりにくくはないのだけど、でも、その佇まいは、画面に上手くハマりき切っていないというか、つかみどころがない感じに見える。勿論これは、(何か秘密を隠しているという)役柄に由来するものでもあるのだけど、星野源のもつ、どこかテレビドラマにハマり切らない感じというのは、キャッチーさと生々しさとを媒介する、演出上で重要なピースなのではないだろうか。

(美村里江綾野剛が、監視カメラ越しに視線を交わす演出で、清水崇の『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』を思い出した。)

2020-07-16

●U-NEXTで『ノンフィクションW 大林宣彦&恭子の成城物語 [完全版]~夫婦で歩んだ60年の映画作り~』というのを観た。最後の映画になった『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の撮影中の姿と、その一本前の『花筐/HANAGATAMI』の撮影中の姿と、両方示されるのだけど、ガン宣告直後の『花筐/HANAGATAMI』の時はまだわりとふっくらしてい元気そうだが、『海辺の映画館』になるとすっかり痩せ細って小さくなっている。それでも、車椅子に座ったまま演出するのではなく、立ち上がって、しっかりと演出していて、すごいなと思った(真っ赤な、『HOUSE』のTシャツを着ていた)。

作中に、「1959年 10月のある日」というラベルのついた、二人がデートしているところをカラー8ミリで撮った映像が出てくる。そこで二十歳くらいの大林宣彦は、すごく鮮やかな緑色の、チェックのジャケットを着ていて(そしてそれは明らかに大林恭子が着ている服と同じ柄で)、こんな服どこで売っているのかと思うようなデザインなのだが、大林恭子がそれを観て、自分が着る服を自分でデテザインして、オーダーして着ていたと言っていて、さすがお金持ちのボンボンだと思った。尾道に行った時、ここが大林の生家だと教えてもらったのだが、勿論、中には入れなかった。その生家の中が少しだけ映ったのだが、やはりすごい立派な家だった。

(あ、でも、「自分でデザインして」の「自分」は、大林宣彦を指すのではなく、大林恭子の方を指すのかもしれない。結婚式の時のウェディングドレスを、大林恭子が自分でデザインして縫製もしたと言っていたし、クレジットはないけど、『HOUSE』などではスタイリストみたいな仕事もした、と言っているし。)

(大林恭子の旧姓が羽生恭子だとこのドキュメンタリーで知った。『EMOTION=伝説の午後 いつか見たドラキュラ』は、脚本が「羽生杏子」になっているけど、これはつまり大林恭子だと考えていいのだろうか。)

大林恭子によると、『EMOTION=伝説の午後 いつか見たドラキュラ』(66年)や『CONFESSION=遥かなるあこがれギロチン恋の旅』(68年)を作っていた頃には、もうコマーシャルの仕事をしていて、経済的に余裕があって、コマーシャルの仕事で得たお金を当然のように映画をつくるのに使っていた、と。金曜の夜にウチにみんなで集まって、土曜の明け方に三、四台の車に分乗して撮影に出かけてつくった、と。コマーシャルでたくさんお金をいただいていて、人並みにはご飯が食べられて、さらに、映画に使えるくらいお金があった、と。

(チャールズ・ブロンソンの「マンダム」とか、カーク・ダグラスの「マキシムコーヒー」とか、リンゴ・スターの「レナウン」とか、そういうコマーシャルをつくっていたのだから、それは当然か。)

で、1977年に『HOUSE』で、商業映画に進出するのだが、当時の東宝の宣伝部にいた人の話では、この映画では監督をスターにする、この映画は監督を売る、映画の売りは監督なのだ、という意図がはじめからあったという。初期の大林の「売れっ子監督ぶり」は、幾分かは映画会社によって作られたものだったわけだ。(おそらく『転校生』によってそれを脱した。そして、大林恭子がプロデューサーとしてはじめてクレジットされたのも『転校生』だ。)

2020-07-15

●いろいろ余裕がないのだが、何か短めの映画を一本観てから寝たいと思って、U-NEXTで『りんごのうかの少女』(横浜聡子)を観た。ちょっと詰めが甘めの映画だとは思ったけど、主人公の少女や少年の撮り方はとても良いのではないかとも思った。撮り方というか、映画のなかでの少女や少年の存在しかたがとても良いと思った。80年代の相米の映画のなかに存在した少女や少年のように存在している感じ。

2020-07-14

●表アイドルソング大賞が「初恋サイダー」(Buono!)なら、裏アイドルソング大賞は「nerve」(BiS)。ハロプロ派でもWACK派でもないけど、第一期BiSはずっと気になっている。第一期BiSは2010年結成、2014年に解散だから、アイドル戦国時代の主要なアクターたち(48グループ特にSKE、スマイレージももクロ、でんぱ、PASSPO、アイドリング等)のなかでは、やや遅れて発足している。

BiS nerve PV バレットタイム Bullet Time (BiSオリジナルメンバー)

https://www.youtube.com/watch?v=GgWt7j9vW7s

BiS / nerve directed by NIGO®(2.5D × VICE)(BiS解散時のメンバー)

https://www.youtube.com/watch?v=F5C8xFyLS18

WACK】Nerve/WACKのフェス。(2017/12/08) (この動画を観るとWACKいいなとすこしだけ思う。カミヤサキが後ろで転んでいる。)

https://www.youtube.com/watch?v=y6ZaOd5kL3c

【BiS】Nerve/WACKのフェス。(2017/12/08) (第二期BiS、プー・ルイ脱退前)

https://www.youtube.com/watch?v=Qbj0VO7TSQE

TIF2013 SMILE GARDEN のドロシ-② nerve / Dorothy Little Happy

https://www.youtube.com/watch?v=L4ZbzrCH06I

Party Rockets の『nerve』

https://www.youtube.com/watch?v=IWem-qcsDa0

HAPPY DANCE "nerve" (2014-04-26)

https://www.youtube.com/watch?v=M0a7C8ZtBWM

Wagg 「nerve」20200103

https://www.youtube.com/watch?v=GG0-y5YZK1M

二丁ハロ nerve (二丁ハロ---現二丁目の魁カミングアウト---のミキティー本物は、BiSの振付師でもあった。)

https://www.youtube.com/watch?v=SPa5nSK5Xts

りなはむ / nerve "日本エヴィゾリ化計画" (苺りなはむ=ヨコヤマリナは、BiSオリジナルメンバーで、最初に脱退した人。)

https://www.youtube.com/watch?v=QPrTP9qIqsE

BiS+ナカヤマユキコヨコヤマリナ「nerve」(ナカヤマユキコ=ユケは、BiSオリジナルメンバー)

https://www.youtube.com/watch?v=C7xrQ0u3ts8

BiS階段 / nerve(BiS階段 ver.) (ノイズバンド非常階段とのコラボ。)

https://www.youtube.com/watch?v=VpjAWcv94ro

BiS研究員 nerve〜primal.階段ケチャ〜フリコピ階段 @トレッサ横浜(BiSとは、Brand-new idol Society=新世アイドル研究会で、ファンは研究員と呼ばれる。)

https://www.youtube.com/watch?v=j4kWmzdL0XM

BiS / nerve(BiSなりの武道館より) (解散コンサート、武道館ではなく横浜アリーナ。)

https://www.youtube.com/watch?v=crDwRKVAH8w

●解散時のメンバーは現在、それぞれが個別の活動をしている。カミヤサキは引退(ウィキペディアには「現在はフリーランスの振付師」と書かれている)、コショージメグミは「Maison book girl」、テンテンコはソロアーティスト、プー・ルイはアイドルグループ「PIGGS」のプロデュース兼メンバー、ヒラノノゾミは新ユニット「おはなの」結成、ファーストサマーウイカはタレントとしてブレイク。

脱退したメンバー。ヨコヤマリナは苺りなはむ名義で「CY8ER」のプロデュース兼メンバー。ナカヤマユキコはアイドルグループ「キミノマワリ」のプロデュース。テラシマユフは寺嶋由芙の名でソロアイドル。ワキサカユリカ、ミチバヤシリオは引退。

2020-07-13

●寝ようとして横になった時にふと、「大場河馬科学研究所」(大馬鹿馬鹿学研究所、と聞こえる)という言葉が頭に浮かんだ。子供の頃に読んだ本にでてきた言葉だと思う。検索したから、『空とぶカバとなぞのパリポリ男』という本に出てくる言葉で、このタイトルには確かに覚えがある。ただ、1980年に出た本で、80年と言えばぼくはもう中学生になっていた。もっと小さい頃に読んだ感じなのだが。そして、ネットにある書影にまったく見覚えがない。

さらに調べると、どうも「学研の読み物特集号」に掲載された後に本になったみたいだ。学研の「学習と科学」は読んでいたので、おそらく「読み物特集号」の方で読んだのだろう。

(物語はほぼ憶えていない。パリポリ男という、「かっぱかにせん」というスナック菓子をいつもつまみ食いしている科学者と、羽根の生えた小さなカバが出てくる話らしい。「かっぱかにせん」という言葉には覚えがある。)

しかし、40年以上前に一回読んだだけの、ちょっとしたダジャレみたいなものが、今になってふっと浮かんでくるというのはどういうことなのだろうか。

●あの本のタイトル教えて!(児童書板)まとめ

http://anohon.wpblog.jp/?p=2654

2020-07-12

高橋洋の新作、すごそう。園部貴一という名前に見覚えがあったのだが、、黒川幸則『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』や『ある歯科医の異常な愛』に出ていた人だった。

https://twitter.com/i/web/status/1282321939885776898

●『MIU404』の主題歌、米津玄師 「感電」のMV、面白い。監督は奥山由之。

https://www.youtube.com/watch?v=UFQEttrn6CQ

星野源 「折り合い」のMVの監督は三宅唱

https://www.youtube.com/watch?v=cMRYfNTlpqo

2020-07-11

●興味深い動画。

企画ばかり(4)バカリズム【聞こえよう】

https://www.youtube.com/watch?v=RgpQPtUC_6M

ここで共同制作されている詞で、起承転結の「起」に当たるのは「今更」ではなく「根本も広瀬も佐々木も」だろう。手探りで滑り出したものから、ここではじめて何かが立ち上がる。そして「転」に当たるのが「偽名でホントは橋本」だろう。この詞を成立させている核となるのは、この二つの部分によって起こる展開(飛躍)だと思う。言ってしまえば、それ以外の部分は冗長性の領域だろう。勿論、内容的には冗長的な部分こそが、雰囲気や流れやグルーヴをつくっているのだが。

だから極端なことを言ってしまえば、この詞の八割は、バカリズムてんちむがつくっていると言える。そして、この詞においてより重要なのは「起」の部分より「転」の部分だろう。というか、「起(根本も広瀬も佐々木も)」を受けて、それを「転(偽名でホントは橋本)」へと展開させる力だと言える。だから、この詞の創造への貢献の、六割から七割くらいは、てんちむによっている。

(「家族な・の・ねー」「了解」という、「オチ」というより「受け」の部分をつくったふかわりょうは、形を整えた、という感じだろう。最も多く採用されているふかわりょうは、この詞の基底をつくっている感じ。)

ただ、共同制作というものの面白さがここにあって、それは、この詞をそれぞれ一人でつくるとしたら、てんちむの詞のクオリティは決して高くなるとは思えないということだ。実際、この詞を構成する八つのパートのうち、てんちむの案が採用されているのは一カ所しかない。この動画をみるかぎり、てんちむの作詞能力が高いようにはみえない。だから、ここで、てんちむが自らの創造性を発揮できたのは、この四人のメンバーの構成のなかにいるということ---この関係性、環境---によっていると言える。

(Boseは一カ所も採用されていないが、それは全く貢献していないということではなく、一つ一つの提案が他の人への刺激として働いているはずだから、潜在的な貢献があると言える。Boseは、てんちむの出した「偽名で実は橋本」を、「偽名でホントは橋本」と修正してもいる。)

なにかをつくることの面白さがここにあって、てんちむのたった一回の貢献が、この共同制作においては、それを方向付け、その核となる、決定的な、最大のものとなった。制作において、この、いつ、どこで出てくるか分からない、決定的な何かを逃さないことが重要だと、改めて感じる。

●これも面白い。創造性ゼロの決定論的な大喜利

企画ばかり(2) バカリズム【境遇大喜利

https://www.youtube.com/watch?v=r5lQXlqcVc4