2020-12-25

●日本語は出来ないけど、耳で聴いて日本語の曲をカヴァーする、インドネシアスマトラ島在住の女性YouTuberのRainychという人がいて(既に有名で、日本のメジャーレーベルからデビューしてもいる)、この人が最新の動画で菊池桃子のカヴァーをしているのだけど、これがすごく妙な感じで面白い。

とても耳がいい人だと思われ、かなり正確に日本語の感じをひろっているのだけど、しかし、端正だからこそかえって微妙に発音のニュアンスの違っているところが目立って、過剰に端正であることと、ちょっとしたズレがあることで、絶妙なボカロ感が生まれる。やわらかくてすごくいい声であることの温かみと同時に、ニュアンスや抑揚がズレることでそこに機械的(非感情的)な表情も重なる、という、矛盾した、とても不思議な感覚がある。おそらくそれが一つの「謎」を構成し、魅惑の元となる。たとえば松原みきのカヴァー。

【Rainych】 Mayonaka no Door / STAY WITH ME - Miki Matsubara | Official Music Video

https://www.youtube.com/watch?v=DHm9diEKlC0

菊池桃子カヴァーでは、そこさらにもう一つ、時々「菊池桃子(の霊)」が混じる感じ。発声まで耳で聴いて正確に憶えるからだろうけど、時々、菊池桃子の特徴的な発声に過剰に寄ってしまって、「菊池桃子出た」みたいな瞬間が、ふっと訪れる。ずっと菊池桃子だとモノマネみたいになってしまうけど、時々、ふっと出ては、すぐにすっと戻るので、別の回線が一瞬だけ混線したみたいな部分が何カ所か出てきて、独自の居心地悪さがあって面白い。

【Rainych】Blind Curve | Momoko Kikuchi (cover)

https://www.youtube.com/watch?v=_2yFeebg7gE

ただ、このように感じるのは、日本在住で日本語ネイティブだからなので、そうではないリスナーは、別の感じをもつのだろう。

こういう人をみるとつい、裏に日本のプロデューサーがいて、日本市場向けに仕掛けているのではないかと疑ってしまうのだけど、そうではないみたいだ。「シティポップの世界的再評価」というのは本当のことなのだろう。

インドネシア人が日本語で洋楽カバーしたら人生変わった YouTuberレイニッチ、空前絶後の大反響に「見つかっちゃった」(ねとらぽ)

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2011/11/news110.html

(声や顔つきからは子供っぽい感じに見えるけど「専門学校でロボット工学を教えていた」というのだから大人なのだろう。)

●「フライデイ・チャイナタウン」(「Friday」じゃなくて「Fly-day」というのを今知った)を今になってカヴァーしてる人がいるのも、シティポップの世界的流行という文脈の上でのことなのだろう。この曲が出た当時は中一か中二だった。シングル盤を買った。イントロのオリエンタルな感じのフレーズが印象的で、割と聴いた(当時「ジャスミン」が何なのか分からなかった)。

今聴いても、イントロのフレーズがかっこいい。ボーカルの人の振りが不思議。

【よみぃ×Ms.OOJAフライディ・チャイナタウン【泰葉】

https://www.youtube.com/watch?v=6DsH_bwQVnQ

オリジナルの方はアレンジがかっこいいという感じ。歌はちょっと単調に感じた。

泰葉 フライデー・チャイナタウン [Yasuha - Flyday Chinatown]

https://www.youtube.com/watch?v=hNFK8RsLXpY