●ここ何日かは、アトリエから帰ってくるとぐったりと力尽きて何もできず、ただ、寝るまでずっと音楽を聴いている。しかし、これがすごく楽しい。自分が、こんなに音楽を楽しめるのだということを、五十歳を過ぎてはじめて知ったというくらいに。
いままでぼくは、「音楽」に対してそれほど親しくはなく、音楽を流しっぱなしなしておくということがなかなかできなくて、音楽をかけると、過剰に集中して聴いてしまって、一、二時間も聴いているとぐったり疲れて嫌になってしまうという感じだったのだけど、ここ数日は、寝る直前までずっと流していて、とにかくそれがとても楽しい。音楽って、こんなに楽しいものだったのか。
(時々、ハマってしまってずっと音楽を聴いているということはあったけど---今年の元旦の山下達郎祭りみたいに---そういう「没入する」感じとは違う、もっと気楽で、とにかく「楽しい」感じ。)
それこそ、バッハやバルトークから、ファンク、イマドキの日本語ラップまで、昔よく聴いていた懐かしい音楽の掘り起しから、YouTubeで偶然みつけたまったく知らない音楽まで、その時に「いい感じ」と思えるものを探して、「おっ」と思ったらそれを流す、ということを寝る前までずっとしていて(ジャンルとかじゃないし、普段は好きな曲でも、今はこれじゃない、と思ったりもする)、そのために、本を読んだりすることがなかなかはかどらない。九十年代にはけっこうCDを買っていたのだけど(円高で輸入CDがとても安かった)、それらを、引っ越してそのままの荷物の奥から引っ張り出して十数年ぶりくらいに聴いてみたり(ディスクがダメになって読み取れないやつとかもけっこうある)。ひたすら呆けたように聴いていて、ひたすら呆けたように楽しい。「楽しい」ということはこういうことなのか、という感じ。
(今更だけど、「ゲスの極み乙女。」すばらしいなとか思ったり。)
(でも、アイドル歌謡と---アニメは好きなのに---アニメ系の曲は、どうしても受け付ないのだけど。音楽に限らず何にしろ、ドラマチックな展開と過度な感傷と「がんばろう/まけないで」的な煽りが苦手みたいだ。)
●たとえばぼくは、夏の強い光や濃い緑を見るとただそれだけで無条件に「楽しい」のだけど、それに近い感じで「楽しい」。この感じができるだけつづいてくれるといいのだけど、本が全然読めないのは困る。