●基本的に、日曜日には「8B33」のスカイプ+ミラノートでの会議があるのだけど(リアルに会う予定の日だったのだが台風のためにオンラインになった)、そこで話題になったのは、やはり「アルファ碁ゼロ」のことだった。これはマジでヤバいだろう、と。メンバーである西川さんが、ちょうど今、大学でアルファ碁について教えているということもあって、この件については詳しい。アルファ碁ゼロがすごいのは、たんに無茶苦茶に強い囲碁ソフトということではなく、どんなものにしろ、ルールを明示できるゲームであれば、すべてに対して応用可能というところだ。しかも、囲碁のような複雑なゲームを、たった三日間、自分たち同士で対戦を繰り返すということだけで、カケツをも破った、AlphaGo Leeに対して100連勝するまでになった。これは実質的に、ルールを明示できるゲームに関しては、もう二度と、人間はAIに勝てなくなったということにほとんど等しいのではないかと思う。
(しかも、アルファ碁ゼロは、過去の人間の対戦データをまったく参照していない。つまり、もう、人間の知恵や歴史はAIの役には立たない。)
おそらくこの技術は、「ルールを明示できる(競合)ゲーム」へと変換(書き換え)可能な、あらゆる分野へ応用が可能だし、今後、実際に様々な分野で応用されていくだろう。そのような意味で、ディープラーニング並みのインパクトをもつ技術ではないか、と。AIは、ディープラーニングによって「直観」を得て、アルファ碁ゼロにおいて「ルールベースで行われるゲーム」を支配した、と言えるのかも。
現在までのところで、AIに決定的に足りていないものがおそらく二つあって、一つは「身体」、もう一つは「自然言語の処理」だろう。ロボティクスは、AIほどには急激に進歩していないので、AIはまだ、自分自身に見合った身体を手に入れていない。そうである限り、囲碁のようなゲームに勝つことくらいしかできないかもしれない。とはいえ、自動運転カーというものは、おそらくAIのもつ最初の本格的な身体と言えるもので、AIは、自動運転カーの実験や実践、そしてその普及を通じて、物理的世界と物理的身体と知能との関係についいての、まず最初の段階の、膨大なデータ量と認識の進化を得ることになるだろうと思われる(いわゆる「記号接地」の実践)。自動運転カーは、人間たちのためにあるというより、AIのための、まず最初のもっともプリミティブな身体ということなのではないか。勿論、有機体としての身体の進化の速度とは比べ物にならない速さで、AIの身体は進化するだろう。
(もしAIが、人間とほぼ同じ形態の身体をもてば、人間のことを高い精度で理解する---解明し尽くす---のではないか。)
そしてそこに、人間並みの自然言語処理の能力(これは「人間並み」で充分だ)が加われば、AIは、瞬く間に、現存するありとあらゆるテキストを読み尽くし、理解し、それを共有して、きわめて短い時間で、全人類の全歴史を追い抜いていくのではないかと思う。
勿論、そんなに簡単には上手くいくはずがないという可能性もある。しかし、もしかすると、そんなにもとんでもないことが本当に起ってしまう可能性もあるかもしれないということを、否定することもまた、できないと思う。