2020-12-13

●最近、YouTubeで、落合博満がホームランを打つ動画をよく観ている---とてもうつくしくて、観ていてきもちがいい---のだが、それで思うのは、ロッテ時代、三冠王を三度も獲得した全盛時代の落合が、いかに観客のいないところで試合をしていたのか、ということだ(背景が、がらーんとしたスタジアム)。

全盛期の落合は、リアルタイムでは(対戦相手以外は)ほとんど誰にも観られていないのではないか、と感じてしまうくらいだ。ある意味、プレーが観客に向いていない(観客とは無関係にプレーする)純粋選手、というか。

(当時は、スポーツニュースで観る川崎球場の、なんとも言えないマイナー感が味わい深いと思っていたのだが、今みると、これでどうやって球団を成り立たせていたのかと思うくらい人がいない。)

(「あの川崎球場」が成り立っていたのだから、あの時代はまだ、社会の隅々にまで資本主義が行き渡っていなかった、よい時代だったと言えるのか。)

入団三年目の81年に首位打者となり、四年目の82年に三冠王(史上最年少)、そして、85年、86年と二年つづけて三冠王になる、というすごい選手のいる球団の試合なのに、観客が増えているようにはみえない。

(そんなにすごい選手が、ほとんど観客のいない川崎球場でプレーをしつづけた、という事実もまた、十分に資本主義が浸透していない時代だからこそあり得た、今ではもうあり得ないことなのだろう。)

(ぼくが観ていたセ・リーグの落合というのは、全盛期を過ぎてもまだ、どこまでも粘って、粘って、まだいけると主張し、それを証明する、粘り腰の存在で、故に、落合といえばふてぶてしいベテランというイメージしかないが、当然、若いころ---たとえば最初に三冠王となった年など---は、ぜんぜん違う感じのプレーがあったはずなのだ。そのプレーは、ほんの少数の人に対してしか顕れていないのだった。)

(動画を観ると、西武戦だけはそれなりに観客がいる。)

落合博満ロッテ時代のHRの映像(1985,1986)

https://www.youtube.com/watch?v=6N2-oHuszmc

ロッテオリオンズ時代の落合博満 ホームラン動画集

https://www.youtube.com/watch?v=YZ97uiTTaTM

YouTubeの動画で掛布雅之が、「落合は、自分は選手会を脱会しておいて、選手会が闘ってようやく獲得したFAの権利を一番最初に使って巨人に行った、あいつはそういう奴だよ」と言っていた(記憶による引用なので不正確)。その通りなのだろう。

2020-12-12

●エリー・デューリングの翻訳、はやく出ないかな。待ち遠しい。

(以下、立花史さんのツイートから引用。)

《最近、デューリングをいくつか訳していて、たしかにプロトタイプ論なんかは、彼が言うところの「ロマン主義」的なアート観に対する批判と対案なのだけれど、同時に、彼の形而上学としてのモノ論に立脚した芸術論でもあって、思弁的唯物論以降に美学を考える視座として、かなり冷静で有益に思われる。》

《SRやSMを経由した先でも、ラヴクラフトやスペキュラティヴ・デザインだけでなく、普通に様式、装飾、デザインを論じられるし、サイバーパンクスチームパンクも、ロボットアニメも宮﨑アニメも、バーレスクも扱える、そんなフレームをエリー・デューリングが整備しているという風に捉えている。》

《エリー・デューリングの「レトロ未来」は、早稲田の表メの紀要みたいなところに当時の院生が苦労して作った既訳があるのだけれど、あらためて原文と照らすと、難解な抄訳みたいなもので、訳のチェックはほとんど受けずに掲載された感じがある。実にあの論系らしい。でもあれではほぼ理解不能だろうね。》

https://twitter.com/FUHITOT/status/1329730985433305088

●2017年4月27日に、法政大学市ヶ谷キャンパスでおこなわれた「エリー・デューリングをかこむ学習と懇談の会」での講演の原稿の日本語訳を、ぼくは関係者から入手していたのだが(「偽日記」2019年9月10日から12日参照)、ネットでPDFを拾えることを発見した。これ、すごく面白いので激推し。「時間の形としての都市 : 東京のパラドックス」(エリー・デューリング、[翻訳]石渡 崇文)。この翻訳は、ぼくが入手したやつとは違うみたいだが(ちゃんと註もついている)。

https://hosei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=21336&item_no=1&page_id=13&block_id=83

2020-12-11

●昨日からつづく。「千のナイフ」を(曲としても、アルバムとしても)はじめて聴いたのは12歳か13歳だったはずだから、もう40年くらい繰り返し聴いていることになる。

他に、坂本龍一の曲で特に好きなのが「Happy End」で、この曲も(40年近い時間のなかで/いくつかのバージョンで)何回繰り返し聴いたか分からない。こういう、自我の芽生えと同時期にすり込まれたようなものは書き換えできない特別なものとなる。

(「Happy End」は、「Front Line」というシングルのB面の曲で、81年に出た。同じ年に出たYMOのアルバム「BGM」にも別バージョンが収録されているが、ぼくはまずシングルの方を聴いた。)

ただ、同じくらいの時期に、ツービートの漫才にものすごいショックと影響を受けたと思うのだけど、当時の漫才を、今、YouTubeで観てもまったく面白いと思えない。ただたんに酷いことを言っているだけにしか聞こえない。これの何がそんなに可笑しいかったのかわからなくなっている。

(おそらく、スピード感、時間あたりのネタの量の多さ、ストーリー性の解体と断片化、前の世代への否定や良識ある人のひんしゅくを買うようなことをわざと言うことによる解放感、などが、当時の他の「お笑いの人たち」と決定的に違っていて、自我に目覚めて生意気になりはじめた---厨二的な---自分にとって新鮮だった、ということだと思う。新しいと感じた理由を挙げることはできても、その時感じた「新しさの感覚」を自分のなかで再現できなくなっている。)

たんに、音楽の寿命は長く、お笑いの寿命は短い(タレントとしてのビートたけしの寿命は長い)、ということでもあるけど、それは同時に、自分のなかに、どうしようもなく変われないところと、懐かしむことすら出来ないくらいに(その当時の感覚を思い出せないくらいに)、決定的に遡行不能で不連続なところがあるということだろう。

(それと、坂本龍一の曲は「難しい」ので何度聴いても飽きない、ということはあると思う。)

「HAPPY END」RYUICHI SAKAMOTO

https://www.youtube.com/watch?v=iSiCZ8kbNnU

Happy End - RYUICHI SAKAMOTO オーケストラによる

https://www.youtube.com/watch?v=kvrvxxQS6Jw

Happyend ピアノによる

https://www.youtube.com/watch?v=0zpelFDnf_Q

Happy End - Yellow Magic Orchestra

https://www.youtube.com/watch?v=75yR0FXZRpw

YMO - Happy End (Live)

https://www.youtube.com/watch?v=0QX-_WQWiLg

ツービート(1979)

https://www.youtube.com/watch?v=9FuLi_UYGbk

2020-12-10

●一番上のリンクの動画をたまたまみつけて観てしまったことがきっかけで、YouTubeで「千のナイフ」動画を観まくる「千のナイフ祭り」がはじまってしまった。

#はらかなこ 千のナイフ Thousand Knives / 坂本龍一 Ryuichi Sakamoto YMO

https://www.youtube.com/watch?v=rvMMJuqcJTA

1000 Knives (Ryuichi Sakamoto/YMO cover)

https://www.youtube.com/watch?v=dGoNVAJ11-o

Ryuichi Sakamoto Thousand Knives

https://www.youtube.com/watch?v=dV8wdoQKKvM

1000 KNIVES - YMO 1979 LIVE at THE GREEK THEATRE

https://www.youtube.com/watch?v=6Z5sJJgX3GM

1000 KNIVES - YMO 1979 LIVE at THE VENUE

https://www.youtube.com/watch?v=BFVcnS8v744

1000 KNIVES - YMO 1979 LIVE at NAKANO SUNPLAZA

https://www.youtube.com/watch?v=632sVjZyd8s

1000 knives - ymo (07/07/12)

https://www.youtube.com/watch?v=qjrQEtIzE3s

Thousand Knives / Yellow Magic Orchestra (World Happiness 2009)

https://www.youtube.com/watch?v=n2JiXM38sRI

Ryuichi Sakamoto - JAPANTOUR2005 - Thousand Knives

https://www.youtube.com/watch?v=p7A6ZK4g-S4

1000 KNIVES  SUGIZO

https://www.youtube.com/watch?v=exRHowIHrns

Thousand Knives/坂本龍一 金沢大学ピアノの会

https://www.youtube.com/watch?v=or9JLNwj3ys

初音ミク】 Thousand Knives 【坂本龍一

https://www.youtube.com/watch?v=AOATYKP9rE8

Ryuichi Sakamoto - Thousand Knives (Piano Version)

https://www.youtube.com/watch?v=sS3oRq7a93I

2020-12-09

マルクス・ガブリエルは面白い。以下、『全体主義の克服』(マルクス・ガブリエル/中島隆博)より、マルクス・ガブリエルの発言からの引用。ここで言われる《否定神学とは異なる否定性》とは、おそらく、排中律のない否定性ということを言っているのだと思う。そして、《人間の実在を超えて、言葉では言い表せない何かに向かうことからは始めないのです》、と。

《(…)この時代(王弼の時代)の哲学に否定神学を見出せない理由のひとつは、それが神についての理論ではないことです。否定神学キリスト教ユダヤ強というあり方に依存しています。ユダヤ教キリスト教という一神教がない状況では、否定性は、神の否定性としてはあらわれません。神は可能性としてすら存在していないからです。当然、唯一神という考えなどありません。とはいえ、無神論でもありません。それは神学的な概念とは無関係なのです。》

《ですから、否定神学とは異なる否定性があるということです。それは超越なき否定性です。否定神学にはヒエラルキー(位階秩序)があるという思想と結びついています。ヒエラルキーという言葉は、否定神学の歴史から来た言葉です。擬ディオニシウス・アレオパギタが専門用語として導入しました。》

ヒエラルキーは文字通りには聖なる秩序です。物質のような質料的なものは流動性があって不安定なので、一番低い階層に位置づけられます。それから魂を有する動物、そして知性を有する人間となるにしたがって高位になっていきます。さらに人間を超えたところに、唯一の絶対者があります。それは、それ自身では構造をもたず、あらゆる物に構造を与えるのです。》

ヒエラルキーの思想が抱える問題点は、最上位の存在と最下位のの存在との区別ができないことです。質料的なものと絶対者は、どちらも同じ(規定できないという)属性をもっているのです。この問題を解決するために、絶対者については何も語ることができないとされました。絶対者については「絶対的である」とさえ言えません。質料については何らかの仕方で語ることができますが、絶対者についてはいかなる形でも語ることはできないのです。》

《ここからさまざまなパラドックスが生み出されます。もしそれが語りえないものだとしたら、それを指示した際に、わたしは何をしたことになるのでしょうか。このようにして、別の問題がさらに出てきてしまうのです。》

《それに対して、中国の伝統思想は、こうしたパラドックスの可能性に気づいています。哲学者たちは、アプローチはさまざまですが、このパラドックスを回避するために、取り消すという操作をするわけです。わたしは、取り消すという操作はパラドックスを受け入れるためのものではなく、その解決策だと考えています。》

《一方、否定神学は、困難を受け入れざるをえません。否定神学論者はパラドックスを受け入れ、実在の最も深いところでパラドックスが起きていると考えるのです。しかし、それでは実在に対して、不明確な見方しか得られません。実在の最も深いところが不明確だと考えることは、自分の心もまた不明確だということになります。》

《わたしはこうした問題をに認識し、パラドックスを回避する方法を見つけ、概念を変えるために、さまざまなアジアの伝統思想、とくに『老子』の思想を取り上げています。ですから、人間の実在を超えて、言葉では言い表せない何かに向かうことからは始めないのです。》

●上で言われる(非常に重要だと思われる)、《取り消すという操作》について、中島博隆の発言。《無とは物と無に分ける二元論ではありません。無は物以前に働くものです》ということ。

《王弼によれば、言語は単なる手段であり、「意(思っていること)」を表現できれば言語の役割は終わります。しかし、言語は間違って使われたり、誤解されたりしますね。純粋な「意」のために、いかにしてそのような誤解や誤用を避ければいいか。》

《王弼はこう考えます。そうした事が起きないように、新しいタイプの言語を発明しよう。それはある種の「取り消された言語」です。王弼は「忘言」つまり「忘れられた言語」という言い方をしています。》

《これは非常に理解が困難な概念です。言語が作動する前に、その誤用や誤解を生む動きを抹消しなければならない。そのような純化された言語を使用できれば、いかなる誤解も生むことなく、純粋な意を表現することができる。これが王弼の考え方です。王弼にとって、無という概念も同じような役割を果たしています。無とは物と無に分ける二元論ではありません。無は物以前に働くものです。これは一種の取り消された働きです。王弼の非常に微妙な定義ですが。》

●これを受けての、マルクス・ガブリエルの発言。

《(…)ウィトゲンシュタインと比べてアジア哲学の際立った特徴のひとつは、あなたが王弼に対して指摘したように、何かしらの操作の取り消しがあり、その取り消しは形而上学的な理論化に基づいているということです。》

《瞑想や救済への明確な道を確保するために、形而上学をただ拒絶しているのではありません。そんなことじゃないんです。これこそ哲学的な理論化なのです。》

●《無とは物と無に分ける二元論ではありません。無は物以前に働くものです》というのを、ぼくなりに言い直せば次のようになる。地(文脈)がまずあって、その中(その上、その後)に、図(意味)が生じるのではなく、地と図は同時に生じるのであって、その「地と図の発生」のときに働いているのが「無」であり、それは地と図の発生と同時に取り消される、ということになる。

 

2020-12-08

坂本龍一の「バレエ・メカニック(クロニック・ラヴ)」は、最初は岡田有希子の曲(「WONDER TRIP LOVER」)だったのか。知らなかった。もともと、女性ボーカルのための曲として書かれた(から、のちに中谷美紀が歌った)ということか。

いや、というか、岡田有希子の「ヴィーナス誕生」の発売が86年3月で、坂本龍一の「未来派野郎」の発売が86年4月だから、どっちが先とも言えないか。自分のアルバムのための曲を岡田有希子に提供したのか、岡田有希子のために書いた曲が気に入ったから自分のアルバムにもいれたのか。

岡田有希子 - WONDER TRIP LOVER  1986年

https://www.youtube.com/watch?v=yFPbRG5uF8Q

Ryuichi Sakamoto (坂本龍一) - Ballet Mécanique  1986年

https://www.youtube.com/watch?v=_ZaDQL6fobA

クロニック・ラヴ / 中谷美紀 2001年

https://www.youtube.com/watch?v=9TlO-RyrO_E

槇原敬之「バレエ・メカニック(Ballet Mécanique)」(デモテープ・トラックス) 2004年

https://www.youtube.com/watch?v=cHH-_khWbF4

Ballet Mécanique (バレエ・メカニック) - Ryuichi Sakamoto (坂本龍一) from Playing the Orchestra 2014

https://www.youtube.com/watch?v=pGW3zyk4GD4

Yakushimaru Etsuko+Yoshinori Sunahara - Ballet Mécanique sub. eng/esp 20018年

https://www.youtube.com/watch?v=xdobeHMPbbM

2020-12-07

●おお、ユリナジアが、9m88の曲(featだけど)で踊っている。

yurinasia : TOSHIKI HAYASHI(%C) feat.9m88

https://www.youtube.com/watch?v=pxc8r-jk7Rg

Stay A While by TOSHIKI HAYASHI(%C) feat.9m88

https://www.youtube.com/watch?v=LmTpDZV8OZQ

●9m88は、MVも良い。

9m88 - Hello Bye Bye (Official MV)

https://www.youtube.com/watch?v=eHKl1DaeiOQ

9m88 - Aim High (Official Music Video)

https://www.youtube.com/watch?v=dimqEPg0NpE

9m88 - 最高品質靜悄悄 Airplane Mode ft. Leo王 (Official MV)

https://www.youtube.com/watch?v=EBRE5FUKNek

●2019年2月9日の偽日記。

https://furuyatoshihiro.hatenablog.com/entry/2019/02/09/000000