01/6/13(水)

ドアを開いて、アパートの廊下へ出ると、真新しい畳のようなにおいをがしていた。表へ出るとかなり強い雨が降っていて、傘をとりに一度部屋まで戻った。郵便受けの脇に生えている、一年じゅうわさわさと豊かに葉をつけている人の背丈ほどの木がびっしりと水滴をつけていて、蛍光灯がそれをぬらぬらと照らしだしている。毒々しいほどの黄緑。傘をさして駅まで。

リノリウム貼りの電車の床は、濡れた靴で歩くと引っ掛かる感じでキュッ、キュッと音がする。傘の先から垂れた水が床に溜まって、表面張力でこんもりと盛り上がる。電車の床、傘の先端の尖った部分、表面張力で盛り上がる水たまりから、やがて一筋つーっと流れる。これらの映像を目にすると、別に実際に見たという訳でないのに、何故か「地下鉄サリン事件」を連想してしまう。あれは確か、水に溶けたサリンの入ったビニール袋を床に置き、実行犯がそれを傘の先端でつついて穴を開けたのではなかったか。ぴんと張りつめたビニール袋に、ぷちん、と穴が穿たれ、そこから一筋の水がつーっと流れた、のだろうか。