●ブック・オフで安く売っていたのでつい買ってしまった、ブレッソンの『ラルジャン』をDVDで観て(すごく久しぶりに観た)、その勢いで古い『リュミエール』を引っぱり出して、蓮實重彦の『ラルジャン』論まで読んでしまった。蓮實氏の批評はさすがに滅法面白くて、実際に映画を観ている時よりも、批評を読んでいる時の方が生々しく画面に触れているように感じられるほどもので、最近こういう批評は、やはり蓮實氏のロメール論(「ユリイカ」)くらいしか読んだことはなく、あらゆる批評がこうであるべきだとは勿論思わないけど、それでもこういう立派なものがあるのだということは忘れるべきではないと思う。ただ、こういう蓮實的な、対象に触れる繊細な手つきが、ブレッソンロメールには有効でも、黒沢清青山真治、あるいは北野武などに対してはあまり有効ではないかもしれないとは思う。