●立川のオリオン書房で、トークイベント「臍で茶飲み話」(福永信円城塔栗原裕一郎)。立川はほとんど地元で、オリオン書房は、いつも画材を買っている世界堂立川店のすぐ近くなのだった。トークは、昨日の東大での博士論文の公開審査のピーンと張りつめた緊張感にくらべ、あまりにまったり、ゆるゆるな感じで、そのギャップに頭がくらくらする(福永さんは、出来れば床にカーペットを敷いて、観客がごろ寝しながら話を聞けるようにしたかったと言っていた)。これは(福永さんの人柄を反映したものでもあるだろうけど)、研究者と作家との、本質的な違いでもあるように思う。作家が、博論の公開審査のような形の、鋭いツッコミに対さなければいけないようなプレッシャーのかかった環境で、クリエイティブな力を発揮するとは思えないからだ。そして、自分のことを顧みれば、自分はそのどちらにもつけず、なんて中途半端な存在なのだろうと思う。
●このトークは「茶飲み話」というタイトル通り、お茶とお菓子がふるまわれた。お菓子の入った紙コップには、トークした三人のサインと落書きがしてあって、さらに、コップの底に三人のうちの誰かの名前が書いてあると「当たり」で、その人からの景品がもらえる。福永さんの「当たり」の景品は、以前「群像」に発表されて、あたらしく出た『アクロバット前夜90°』に収録するつもりで書き直して、でも結局は収録しなかったという、「五郎の読み聞かせの会」(ぼくはこの小説がとても好きなのだ)の幻の別バージョンの校正刷りだった。で、ぼくは当たらなかったのだが、トークが終った後に、観客として来ていたジュンク堂新宿店の坂根さんと話していたら、坂根さんが福永さんの「当たり」をゲットしたことが分かり、早速、オリオン書房コピー機でそれをコピーしてもらったのだった。そして、驚いたのは、オリオン書房コピー機は、一枚10円ではなくて5円だったことだ。